たった一つの星

□04,
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人気のない山奥を駆ける飛影と紫龍。
体重の軽い2人でも、枝の上を蹴ると葉が音を立てた。
常人には黒い影としてしか捕えられないであろう速度で進んでいく。

しばらく行くと、木々の生い茂った山奥とは不釣合いな、大きな屋敷が姿を現した。
2人は気配を消して足を止める。
枝の上に立って身を隠し、屋敷を窺った。


「(ここか…)」

『じゃあ僕、忍び込めるところ探してくるね』


そう言い、紫龍は飛影を残して跳んだ。
屋敷から見えないよう気を配りつつ、枝の上を走っていく。

2人が、山奥に隠れるようにそびえ立つ屋敷に来た理由、
それは飛影の妹――雪菜を探すためだ。
魔界から人間界へ来た理由もそれなのだが、
紫龍が何度か霊界へ忍び込んだものの、情報が少なすぎて八方塞だったのだ。
そこへ先日の指令。
それこそまさに、飛影が求めていた情報だった。


『(きっと霊界も、使い魔が偶然見つけた情報だろうね…)』


紫龍の兄、嵐夜が大雑把にではあるが、場所を教えてくれた。
山に入れば、後は紫龍の鼻で一発だった。
呪符の結界で阻まれてしまえば、たとえ飛影の邪眼でさえ雪菜を見つけ出す事は出来ない。
けれど、犬より鋭い嗅覚の持ち主である紫龍を誤魔化す事は出来なかった。


紫龍は黒いフードを深く被りなおす。
その顔に、いつもの幼さはなかった。

絶対に見つけ出す。

その決意だけが現れていた。
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