小説
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3.まだいた
「席順はこの私が適当に決めたから言われた奴から座りなさいゴミ共!!」
Mrs.腹黒柳が言い、廊下側の一番前の机を叩いて
「茶中ひろき!!」
と叫んだ。
「はあ!?」
茶中ひろきが一番前であることに不満を漏らす。
「文句言うんじゃないわよさっさと座りなさいノロマが!!」
Mrs.腹黒柳は机をバンバン叩きながら言う。そして叩きすぎて痛くなったのか手をひらひらさせていた。チャナは渋々席に着く。
「その後ろ、みやもっつあん!!」
「はぁーい」
みやもっつあんは適当に返事をしながら席に着く。
「あの制服どうなの? セクスィー過ぎるんじゃない?」
霜月二十日がみやもっつあんを見て言った。
「制服どころか下半身タオル1枚のお前に言われたくねぇよ!!」
振り返ってみやもっつあんが叫ぶ。
「あら、聞こえたの?」
「聞こえるわドアホ!!」
「弥弥ちゃん口調! 口調!」
滝川菜々に宥められ、我に返った。
「あらやだわたくしったら、オホホホホ」
「……」
教室内が一瞬シンとなり、すぐにMrs.腹黒柳が気を取り直して
「その後ろは西野健太郎!!」
と言う。
「えっにしけん…」
するとみやもっつあんの頬が赤く染まる。さっきとは正反対の態度だった。西野健太郎がみやもっつあんの後ろに座り、
「よろしくね、もっつあん」
と微笑みかけると、みやもっつあんは奇声を上げて机に突っ伏した。
「…大丈夫なのアノ子?」
神有月神無がみやもっつあんを指差して菜々に問う。
「あ、大丈夫。いつもああだから」
「ああ、そう……って何でやねん!!」
「えぇ!?」
突然ツッコまれた。
「ツッコミのタイミングおかしくね?」
中町たくとが呟く。その間ににしけんの後ろに白幕組娘、その後ろにタテカ・ユキが座っていた。
「次!! 神有月神無!! アンタはココよ!! 早く来なさいノロマ!!」
Mrs.腹黒柳がチャナの隣の席を指差して叫んでいた。
「あぁん!? ぬわんであきちがアンタにノロマなんて言われなきゃいけないのよっっ!!!」
言いながら神無はズカズカとMrs.腹黒柳に近付いていく。
「神有月さんっ一応先生…」
「神様って呼びなさいって言ったでしょぉぉぉ!!?」
振り返って菜々に向かって歩いてきた。
「声かけられたからって戻ってくんな!!」
たくとが叫ぶ。
「相変わらずだけど96組うるせーなー」
「てか去年よりうるさくね?」
「調子に乗ってんじゃないわよぉぉぉ!!!」
隣のクラスから声が聞こえて、神無は叫びながら隣のクラスに乗り込んでいった。一瞬教室がシンとなる。すぐに隣のクラスから何やらよく分からない音が聞こえてきた。たくとは溜め息を吐く。
「腹黒柳、あの人はほっといて続き言ってくれその後ろから」
「ちゃんとMrs.をつけなさいカスが!! その後ろは滝川菜々よ!」
「えっ…ウチ神有づ…神様の後ろ?」
嫌そうな雰囲気を滲ませながら菜々が呟く。先程の件で神無には絡みにくいと判断したようだった。渋々前から2番目の席につく。
「よかったよ〜菜々ちゃんが隣で〜」
横からみやもっつあんに声をかけられる。
「うん…ほんっっとに弥弥ちゃんが隣でよかった…」
菜々の方はかなり本気だった。
「その後ろは山渡正!」
「はいっ」
山渡正は何か言われる前にさっと席につく。
「おー正! ラッキー!」
にしけんはハイタッチしようと手を伸ばしたが、正には何を意味するのか分からず、首を傾げるだけだった。
「よろしくね〜ただしくん」
菜々が振り返って言う。
「しょうだよ滝川さん」
「うんそうだけど、字がただしだし」
「よろしくーただしくん!」
みやもっつあんもにっこり笑って言う。
「あー…まあいいけど」
「次! その後ろは梅田ジュン!」
「やったっ」
梅田ジュンは嬉しそうにしながら席につく。
「よかったよ〜お前ら近くて」
正とにしけんを見ながらジュンが言った。
「その後ろ! は…アラ? アノ子は何処に行ったの?」
Mrs.腹黒柳はキョロキョロと教室内を見回す。
「先生、神様ですか? 神様ならさっき5組に…」
「違うわよ! 神様さんはそこじゃないの!」
Mrs.腹黒柳は菜々の前の席を指差して言う。
「神様さんって…さんいらなくね?」
「お黙りなさいにしけんさん!!」
あ、そういう感じなんだ。と一部の人間は悟った(本当に一部)。
「にしけんさんって何よ! ちょっと面白いじゃないの!!」
「ちょっと黒幕さんアナタさっきからうるさいのよ静かにしなさい!!」
「なんであたいは面白い呼び方しないのよォォォォ!!!」
「あっこ! 話進まないから抑えて!!」
「黒幕さん! アナタは本当に…!」
「あ〜ホラ先生怒ってんじゃん」
「気に入ったわ」
Mrs.腹黒柳はポッと頬を染める。黒幕もにっこりしていた(逆に怖い)。
「なんで!?」
「Mrs.腹黒柳」
そこで例野阿之人が教室に入ってきた。
「キモッ!! アラ例野先生、いなかったんですか」
「うわ…Mrs.腹黒柳ヴォル●モートっぽい人にまで容赦ねぇ…」
「担任と副担任だから立場的には例野先生の方が上だけど、権力的にはMrs.腹黒柳の方が上なのよ」
呟いたたくとの隣で下様が言った。
「権力って何の!?」
「転校生を連れてきました」
ヴォル…例野阿之人が畏まった口調で言う。
「アラついてきてなかったの? アノ子」
「Mrs.腹黒柳、周り把握してください」
誰かが言った。Mrs.腹黒柳はシカトする。
「てか96組に転校生?」
「どんな子なんだろー楽しみ」
にしけんとみやもっつあんが盛り上がっている。
「アンタ達うちらの時は楽しみにしてなかったじゃないの! なんなのこの態度の差!!」
「いやお前ら突然だっただろ」
「てかまだいたんだ…新メンバー」
「お入りなさい! 長月さん!」
Mrs.腹黒柳が呼び、全員の視線がドアに集まる。すると1人の少女が教室に入ってきた。ほわほわした雰囲気の可愛らしい少女だ。制服もまともに着ているし、見た目には特に変な点はない。
「長月夜長ですーよろしくお願いしまあす」
黒板の前に立って、長月夜長は間延びした声で言った。
「…普通に可愛いじゃん」
たくとが下様をチラッと見て呟く。
「ちょっと! なんでアンタ今下のことチラ見したのよ!」
「…いや? てか一人称シモ!?」
「ちょっとアンタ、みよじ長月って言った?」
チャナの隣の席で神無が夜長に尋ねた。
「うわっかみあっ…神様!? いつからそこにいた!?」
「ひつれいね。最初からいたわよ」
「嘘吐け!!」
「ひつれいにはツッコんじゃいけない…?」
「うん…多分…」
その後ろでは菜々とみやもっつあんが空気を読んでいた。
「で、みよじは長月なの? そうなのね?」
前に向き直って神無は再度夜長に尋ねる。
「? うんー長月だよー」
「誕生日は?」
「誕生日? 9がつ15にちだよー」
「下様! 師匠! きたわ!! この子条件を満たしてる!!」
突然神無が立ち上がり、振り返って叫んだ。そして向き直って満面の笑みで夜長を見る。
「アンタ、あきち達の陰暦トリオにいれてあげるわ!!」
「黙れ!!」
チャナが思い切り神無の頭を叩く。夜長はその様子をニコニコと見ていた。
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