小説6

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4.ツッコミの多い座席発表


茶中ひろきに叩かれ暴れ出した神有月神無を落ち着かせるのに、クラスがかりで15分を要した。その間長月夜長はその光景をニコニコと見ていた。ようやく神無が落ち着いたところで、夜長は席に着く。
Mrs.腹黒柳が気を取り直して、

「中町たくと!」

と神無の隣を示して行った。

「えー」

中町たくとは嫌そうにしながらも席に着く。

「その後ろは黒幕明子!」
「はーい」

適当に返事をして黒幕明子は席に向かった。

「あっこーやっほー」
「やっほー滝川さん」
「アンタホントに黒幕っていうの? 変なみよじね」
「あぁ゛!? アンタに言われたくないんだよ!」
「ぬわんですってぇぇぇ!?」
「お前らいちいち喧嘩すんな!!」

神無と黒幕が再び乱闘になりそうだったのでチャナが止める。不良少年だったはずなのに自分よりも(違う意味で)酷いやつのせいでいい奴化してしまっている。

「その後ろは霜月二十日!」
「はぁーい」

霜月二十日がくねくねしながら近付いてきた。

「うわっ」

黒幕が言った。

「次は鳴山和馬!」
「うわっ」

鳴山和馬が言った。自分が下様の後ろということに対して言ったようだ。

「何よアンタ! 下の後ろが嫌なの!?」
「いや…嫌…いや…嫌…いや、ていうかなんで黒幕には言わねぇんだよ! 黒幕もさっき『うわっ』って言ったじゃん!!」
「あら、聞いてなかったわ。そうなの黒ちゃん?」
「言ってません」
「黒幕てめぇぇぇぇ!!!」
「お黙りなさいナルシストさん!!」
「誰がナルシストだ誰が!!」
「お前だよ」

梅田ジュンが横で言う。

「俺は鳴山だ!!」
「まあまあ、落ち着きなぁよナルシストくん」

鳴山の後ろから声がして振り返ると、夜長がニコニコしながら鳴山を見ていた。

「だからナルシストじゃねぇって…」
「長月の言う通りだろ。落ち着けよ和馬。まだ座ってない奴もいるんだぞ?」

たくとに言われ、とりあえず落ち着いて鳴山は座った。

「その後ろは座野真駄実よ!」
「はーい」

何か言われると面倒なので、座野は普通に座った。

「何アイツ。変なのは名前だけで滅茶苦茶普通じゃない」
「つまんねー」

先程の喧嘩が嘘のように、神無と黒幕がひそひそと話していた。

「うるさい! いいだろ別に普通で!!」
「コイツらに乗るな座野ォォォォ!!!」
「あっ…すいません」

たくとに言われ、思わず座野は敬語になった。そして黙ったので、Mrs.腹黒柳は咳払いをする。

「次! そこは前田・HG・エンジェル!」

そして窓際の1番前の席を指して言った。

「ハーイ♪」

前田・HG・エンジェルがそんな感じで席に着く。

「ん、彼何だか、下と同じ臭いがするわね」
「一緒にすんな!!!!」

前田が振り返って盛大に突っ込む。

「だからアイツらに突っ込むなって言ってんだろうが!!!」
「だってここ突っ込んどかないとミーアレと一緒にされるんだぞ!?」
「同じようなモンだろうが!!」
「何処がだよ!!」
「ハーフとニューハーフだろうが!!」
「ハーフとニューハーフ全然違うだろうがああああああ!!!!」
「ちょっと誰がニューハーフよ!」
「お前に決まってんだろおおおおおお!!!!!」

前田とたくとが同時に叫ぶ。教室内がシンとなった。立ち上がっていた二十日が再び座る。

「…まさか見抜かれていたとはね」
「否定しねぇのかよ!」
「だからタオルを巻いてるんでしょ?」
「もっと身につけるもんがあるだろ!!」
「その後ろ! 藤城ゆゆ!」
「おいまだ決着ついてねぇぞ!」
「うるさいわね!! いい加減黙りなさい!」

Mrs.腹黒柳もご立腹だったので、しょうがなくたくとも前を向く。特に何も言わず、藤城ゆゆが前田の後ろに座った。

「あの子は長月ちゃんのライバルになるんじゃない?」

神無が後ろを向いて夜長に言った。

「え?」

夜長が言う。ほんわかした雰囲気は確かに似ている。するとゆゆが笑った。

「えぇ〜あんな何にも考えてなさそうな子と一緒にしないでよぉ」

再び教室内がシンとなる。

「つ、次! その後ろにぬさたっかん!」
「は、はい」

Mrs.腹黒柳が若干動揺しながら言い、続くぬさたっかんも動揺しながら席に着いた。

「何? 彼も名前の割に普通じゃない」
「あーぬさは普通よ普通。名前はこっちのミス」
「ああそうなの?」

神無と黒幕が呟く。何だかんだで親しげである。

「次は藤松和平!」
「はーい」

呼ばれて藤松和平が席に着いた。

「なんか聞いたことある名前ね」

二十日が振り返って和平を見ながら言う。

「ああ、それ多分某小説家だよ。一字違いなんだ。だからみんなにもどきとか呼ばれてるけど…」

二十日の斜め前から菜々が言った。二十日は菜々の方を向く。

「そうなの。流石ね」
「えっ…何が?」

何故か二十日に何かを見透かされたような気がして、菜々は焦った。

「次は師走野師走よ!」
「んちゃ!」

言って師走は笑顔で座る。突っ込まないように、皆視線を逸らした。

「えーアラレにも何か言ってよー!」
「お前アラレじゃねーだろ!!」
「座野突っ込むなって言っただろうがああああああ!!!!」
「あっすいません」
「うほほーい! ざのちんダイスキ!」

こうして座野は師走に懐かれたのだった。

「あ、あと1番後ろの真ん中の席が金マリオよ」

Mrs.腹黒柳が適当に言う。

「ちょっ…何その扱い!? しかも1人だけこんなど真ん中!?」

金マリオが1番後ろのど真ん中に置かれた机を指して言う。しかしMrs.腹黒柳は完全無視で次の作業に入っていた。

「ちくしょおおおおお!!!」

叫びながら金マリオがズカズカと席に着く。そしてようやく96組が始動したのだった。


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