小説

□中上
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何が遭っても必ず助けに行くよ。お前は鈍感だから気付いてないけど、オレは生まれた時からずっと、

お前の事が好きだったんだから。


1000年先のブストーリー
中上編:のチカラ


佐藤飛鳥は走った。大切な夢夜を、取り返す為に。
佐藤飛鳥はひたすら走った。大切な夢夜を、魔の手から守る為に。




≪夢夜サイド≫
まったく! 酷いよねー飛鳥ったら。黒月君をそんな風に言うなんてさ。確かにちょっと暗〜い感じはするけど、何もそこまで言わなくてもさ…あれ? あたしも言い過ぎかなぁ?
明日髪結んでくれなかったらどうしよう。黒月君と付き合ったら飛鳥と一緒にいられないもんね…やっぱり切るしかないのかなぁ…ん? そういえばさっきから黒月君一言も喋らないよね? こっちから帰ったのも沢山話すからって…緊張してるのかなぁ?(日本一の鈍感少女

「あのぉ〜黒月君?」
「あ? 何?」
「いや…さっきから…黙ったままだから…」
「あぁ……杉本さんってさ、」
「はいっ!」
「馬鹿だよね」
「はぃ…って、えぇ?? どうして!?」

黒月は、いきなり笑い出した。

「だってこんな簡単に引っかかるんだもんよ!」

(!?)

「ど、どーゆーこと…?」

夢夜は恐る恐る聞いた。

「アレ? まだ分かんないの?? あんたって本っ当に鈍感だよねーあんたはぁーこーんな簡単な罠に引っかかったって事! あんたの幼馴染…飛鳥とかいったっけぇ? あいつ勘付いてたみたいじゃん。あんたがあいつの忠告聞かないからこんな事になんだよ!!」

黒月は本性むき出しで言った。


『あいつはやめとけって!』


「嘘…飛鳥ぁ…」

飛鳥…ごめん…飛鳥ぁ!!

「飛鳥ぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

夢夜は大きな声で叫んだ。



その声は、飛鳥の耳にも届いた。ここから近い。飛鳥は次の角を右に曲がることにした。

「な〜に言っちゃってんのコイツ。馬鹿じゃない? あんたの大事な飛鳥君は、あんたが1人で帰れっつーからとっくに帰っちゃったよ? もう今頃家に着いてんじゃない?」


黒月の声が聞こえた。飛鳥はこの角を曲がった所に2人が居る事を悟った。

「全く、鈍感な女だなぁ。もう誰も助けになんか来ちゃくれないよ。あんたは幼馴染にまで見放されちゃったの!」
「誰が見放したって…?」

曲がり角から一人の少年が現れた。

「なっ…」
「飛鳥!! どうして来てくれたの!?」
「馬ー鹿! お前が鈍感だからだよ!」
「馬鹿な…! お前はさっき帰ったはずじゃ…」
「帰ったよ」
「へっ?」

夢夜と黒月が間抜けな声を出した。

「1回帰ったよ。門もくぐったさ。けど戻って来たんだよ。お前が魔界のブラックホールだってきいてなぁ!!」

そのとき夢夜が、思い出したように言った。

「! 魔界のブラックホール…黒月一族…」
「ハハハハハハ!!!! やっと気付いたんだ? あんたってホンットに鈍感だよなぁ。魔界一名乗れるよ! 魔族なのにそんな鈍感な奴、俺は見た事もない!」
「煩ぁい! 煩い煩い煩い!!!! 悪かったわね鈍感で! しょーがないでしょ親譲りなんだから!」

え? 理京の事??

「許さねぇぞお前! 夢夜の悪口言いやがって! ブッ潰してやる!」
「ハッ! お前如き下等動物がこの俺に何をほざいている! お前そんなにその鈍感女が好きなのか!?」

黒月が嘲笑うように言った。
飛鳥は真剣な表情で答えた。

「好きだ! 誰よりも愛してる!!」
「飛鳥…」
「確かに、夢夜は鈍感で不器用で馬鹿な女だよ!」
「そんなに言わなくてもいいじゃん…」

夢夜が呟いた。

「でもそんなとこも全部ひっくるめて、オレはずっと夢夜が好きだった! これからもずっと好きだ! お前なんかには負けない!!」
「愛の力とでも言うつもりか? フン、笑わせてくれる! どうやらお前も相当馬鹿らしいな。そんなものでこの俺に勝てると思っているのか!」
「何とでも言えよ。正直、オレだってお前に勝てるとは思っちゃいねぇ。けどなぁ、目の前に好きな女がいるんだよ。負けると分かっていても相手に向かっていくのが、人間の男ってもんなんだよ!!!」

飛鳥は負けを承知で黒月に向かって走った。



夢夜…オレはずっとお前が好きだったよ…

でもお前は鈍感だったから、それに気付かずにいつもオレの前で違う男の話をしてたな…

それでもオレはお前が好きだった…

父さんがお前のおばさんを好きだったように、ずっと…




「飛鳥あぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

辺りには、夢夜の叫び声が響いた。



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