小説
□前
1ページ/1ページ
「夢夜ーっ遅刻したいのっ!?」
杉本家からは朝から母親の叫び声が聞こえてくる。
「したくなぁ〜い;; ひーっ」
慌てた様子で1人の少女が家から出てきた。長い前髪が顔を覆っている。彼女がこの物語の主人公、杉本夢夜(14)である。
1000年先のラブストーリー
前編:幼馴染のフタリ
「いってきまー」
(あ)
夢夜は前髪に覆われた視界に、1人の少年の姿を見つけた。
「飛鳥ぁぁぁぁ前髪結んでよぉぉっっ置いてく気デスカー!?」
(来た!)
【注】朝の日課
「もぉーっまたかよ;; 前髪切ればいいじゃん」
佐藤飛鳥(14)が振り返りながら言った。
「やだよぉっ切りたくないー」
「なんで」
「飛鳥が結んでくれるから!」
夢夜は笑いながら言った。
「イイねぇ。青春って感じで」
「うん♪」
玄関には、2人を見守る親の姿があった。
「結婚するかしら。あたしたちの代わりに」
杉本理京(46)が、笑って言った。
「さぁな…でも、してほしいな」
佐藤一純(49)も笑いながら言った。2人とも、年の割には随分若く見える。30代前半といった所か。
「あの2人には…――」
2人は、顔を見合わせて言った。
ここで微妙に紹介。。。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
杉本夢夜(14)
杉本家の次女(理京の子)。
本名はユメヤ・コルノール。
もちろん魔女。
★★★★★★★★★★★★★
佐藤飛鳥(14)
佐藤家の次男(一純の子)。
一応人間。
夢夜が魔女であることは知ってる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〜その頃〜
「Σはっチコクする!」
「いっっつもオレまで巻き込みやがって# あと何分だよ」
走りながら飛鳥が言った。
「あと5分しかないよ〜〜」
腕時計を見て夢夜が言った。
「Σうそだろ!? 走っても10分はかかるよ。いつもギリギリだけど今日はヤバイ」
さぁ、どうする!?
「こーなったら奥の手を使うしか…だれもいないよね? お母さんもいない」
奥の手?
「奥の手?」
あ、かぶった。
「瞬間移動(テレポーテーション)!」
「うわっ…」
ぱっ
次の瞬間、2人は校門の前にいた。
「い…いきなり出てきた…」
校門の前にいた風紀委員の生徒がちょっぴり怯えてますけど…?
「これでセーフ♪」
「いやあるイミアウト! 風紀さん見てる!!」
クルッ
夢夜は普通に怖い笑顔(どんな笑顔だ)で振り返った。
「記憶消去(メモリーデリート)♪」
「…あれ?」
風紀さんの台詞。どうやら忘れたみたいですね。
「これでOK♪」
「おいおい…」
「あれー? 今なんか…」
風紀さん、まだ悩んでます。
「おはようございまーすv」
「ハハハ…;」
(悪気ねーなコイツ…)
飛鳥は最近悩んでいた。
キーンコーンカーンコーン
≪2-4≫
「はよー夢夜。と佐藤」
「相変わらずラブラブだねぇ」
2人が教室に着くと、夢夜のマブダチ・最上知香(13)と内田聡美(13)が声をかけてきた。
「違う! ウチ(オレ)ら付き合ってない」
聡美の言ったことに対して、2人は同時に反発した。
「よくゆー。一緒にガッコ来て?」知香が言った。
「ハモって?」聡美が言った。
「ねー」2人同時に言った。
「それにィー佐藤のカ・オv 真っ赤ー」
知香が言った。
「へ? カオ?」
夢夜が振り返って見ると、確かに飛鳥の顔は真っ赤だった。
「キャハハハ…カワイーv」
知香と聡美が言った。
「飛鳥…」
「……」
「熱あるんじゃない?」
「へ?」
夢夜の反応に3人は驚いた。
「きつかったら先生に言いなよ?」
夢夜はそう言って去っていった。
後に残された飛鳥は心の中で呟いた。
(違っ…;)
「大丈夫?」
知香が飛鳥の肩に手を置いて言った。
「最上…内田…」
飛鳥が悲しそうに言った。
「夢夜、鈍感だから――…」
全くそのとおりです。
≪下校中≫
「えっΣ(゜口゜)告られた!?」
「うん(顔文字?)」
「だっ誰に!?;;」
飛鳥、焦り気味。
「んー隣りのクラスの黒月御影君」
「!」
ん? どうした飛鳥?
「まっまさか付き合う気じゃ…」
「付き合ってもイイかなぁーってv ホラ黒月君カッコいいし」
「だめだ!!」
飛鳥が突然、声を張り上げた。
「アイツはやめとけって!」
「……なんで飛鳥がそんな事言うわけ? あんたには関係ないでしょ」
「そっそれは…」
(なんか雰囲気めっちゃ怪しいからとか言えないよな…)
「杉本さん」
飛鳥が困っていると、後ろから声がした。
「黒月君」
声の主は、噂の黒月御影だった。
「今日一緒に帰れる?」
「え? うん大丈夫だよ」
飛鳥はその間、後ろからジッと黒月を睨んでいた。すると夢夜が振り返って言った。
「じゃ、そういうわけだからあたし、今日は黒月君と色々話しながら遠回りで帰るから。飛鳥は1人で帰ってよ」
「えっ…」
「じゃあね」
そう言って2人は歩いていった。
「夢夜! 夢夜!!」
飛鳥は後ろからひたすら叫んでいた。
「お帰りー飛鳥君。あれ? 夢夜は一緒じゃないの?」
家の門を開ける直前に、飛鳥は理京に呼び止められた。
「おばさん。夢夜なら今日は別の男と帰りましたよ」
飛鳥は、夢夜の話はしたくない、といった感じだった。ところが理京の性格だと、そうはいかないらしい。
「別の男ォォォォォォ!!!!!??? ちょっ何それ!? こりゃ事件だ!! 一純呼んで来る!!」
「え!? 父さんを!? そんな大事なの!??」
飛鳥が言い終わる前に理京は既に消えていて、何秒も立たないうちに一純を連れて戻ってきた。
「飛鳥!? 話は聞いたぞ!? 夢夜ちゃんが別の男と!?」
…何だ、この親。
「そうだよ」
飛鳥は答えた。
「相手は誰なの!? 名前は!? その人と夢夜は付き合ってるの!?」
続いて理京が問いかけた。
「まだ付き合ってないよ。でも付き合うかも。今日告られたって言ってたし。名前は黒月御影」
飛鳥がそう言った瞬間、理京の表情が変わった。
「クロツキ…?」
「おばさん?」
「理京? どうした? クロツキって、何かヤバイの??」
「多分…遊二ーーーーーーー!!!!!」
理京がそう叫ぶと、理京の夫・杉本遊二(47)が現れた。遊二もまた、理京や一純と同じ様に、30代前半に見える。
「どうした? 理京。そんなに慌てて…誰か何か事件に巻き込まれたか??」
「ねぇ遊二。『クロツキ』って言ったら…アレよね??」
「クロツキ…? 『魔界のブラックホール』と異名を持つあの魔界一族のことか?」
「やっぱり…」
「魔界のブラックホール!?」
(何かよく分かんねぇけどヤバそう…)
横では、佐藤親子の台詞(と頭の中)が一致していた。
「で、その『クロツキ』が何なんだ?」
遊二が言った。
「夢夜が…クロツキって男の子に告白されたんだって」
「何だって!?」
「それだけじゃない…夢夜は今日…そいつと帰ってる…『色々話したいから、遠回りで』って、そう…言われたんだ…」
飛鳥は言った。
『じゃ、そういうわけだからあたし、今日は黒月君と色々話しながら遠回りで帰るから。飛鳥は1人で帰ってよ』
もし黒月が本当にその“魔界のブラックホール”って名前の一族の1人だったら…
もし黒月が「遠回りで」って言った理由が色々話したいからじゃなかったら…
もし夢夜がそれを知らずについていったのだとしたら…
夢夜が…夢夜が危ない!!
カバンを地面に置いた。振り返って飛鳥は、帰り道を戻り始めた。
「飛鳥くん!」
「飛鳥!!」
「今日は飛鳥といっぱい話しながら帰りたい」。そんな時に夢夜が通る、『遠回りコース』へ向かって。
中上編へ