* If *

□If
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それから仕事の量はどんどん増えていき、忙しくなっていった。
仁と二人で大人気のゴールデンドラマに大抜擢された時は、勿論俺は知っていたのだけれど、隣でバカみたいに騒いでいる仁を見ていたら俺も一緒に喜ばずにはいられなかった。










































「あー。でもちょー不安!!俺人見知りだからさー」
















「笑。確かに、初対面苦手だよね、仁は。仲いいやつにはすっげーワガママなのに!」























「うっせー!…でも、亀が一緒なら安心だ。心強い!」






























嬉しそうに、にこにこと笑いながらそう言う仁を見て、胸が熱くなる。素直に嬉しいと思う。こんな風に、何の不安もなくお互いのことを信頼して、背中を預け合っていたよな。この頃の俺たちは。






















同じことを二度しているはずなのに、そんな感覚はあまりなかった。勿論覚えていることは沢山あったのだけど、とても新鮮な気持ちだった。毎日がとても楽しく、充実していた。








































ドラマが進むと仁はすぐに、他の共演者と仲良くなった。ほとんどが同年代の男子だから、すぐに馬が合ったみたいだ。仁は男からみても恰好よくて、面白く、付き合いやすいタイプなことを客観的に見て、この時初めて感じた。
いつもはジャニーズJr.という狭い世界で生きているから、この時色々なことを初めて知ったんだ。





































俺は自分の役柄のせいか、みんなと絡むシーンが少ないせいか、どことなくまだ馴染めずにいた。
それでも一人でいる事が全く苦ではなかったし、のんびり台詞を覚えることができていいとさえ思っていた。









































「かぁめー!!」




























それなのに。仁はいつも俺のことを気にかけて、俺の名を呼ぶ。いつの間にか必ず隣に居た。




































「いや、いま台詞覚えてるから…」






















「こいつの一発芸見て見ろよー!めっちゃウケるよ!!」


























俺の言うことなんて聞かずに、強引に手を引いてみんなの輪にひっぱりこんでくる。10代の男が何十人も集まったら、もう何をやっても面白いものなのだ。何度も何度も、お腹が痛くなるほど笑った。















本当は、少し嫉妬していたのかもしれない。誰にでも人懐こくて、すぐに仲良くなれてしまう仁に。俺のことを置いていってしまうかのように感じて、素直じゃない俺はそのまま、それなら俺は一人でいい、と。そう決めてしまったのかもしれない。























自分で自分の気持ちを推理するなんて、バカみたいだな。
それでももう一度、やり直しているからには。考えるべきことが沢山あるような気がした。仁の気持ちだけではなく、自分の気持ちも。




















































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