* If *
□If
1ページ/4ページ
第一章
「…め、亀っ!」
その声にハッとすると、みんなの視線が俺に集まっている。机を囲んで座るいつもの会議室で、数名のスタッフとメンバー達。そうだ。今は次のツアーの打ち合わせをしている最中だった。
「おいおい亀、ボーっとしてんなよ〜」
「まぁまぁ。お疲れだからね〜昨日も遅かったんでしょ?」
そう言う中丸と田口の横では、我関せずといった様子の上田がじっと机の上の資料を読んでいる。
「わり!なんか一瞬意識飛んでた!」
笑ってそう誤魔化す。何を考えていたか?俺は数時間前に撮ったBSの歌番組の様子を思い出していたのだ。
それは、俺らの10年間の軌跡を追った特集が組まれていた。
ものすごく若くて不細工な俺と同じくとても若いメンバー達から始まったその映像には、勿論今はもういない2人のメンバーも映っていて。
案外長い間VTRが続くものだから、ついついボーっと見入ってしまう。
早かったな。
そうふと思う。メンバーが4人になっているなんて、この頃の俺は思いもしなかった。
色んなことがあった。本当に、色んな事が。こんな数十分の映像なんかじゃ、まとめきれない程に。
.