Blanches fleur
□左手の薬指で繋がる
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計器が定期的に柔らかな音を発する。
それが何をする機械なのか、ラグにはさっぱり分からなかったが、ロゼの体調が安定しているということは何とはなしに理解できた。
ビスクドールのように冷たくも暖かくもない左手を取って、その薬指にそっと白詰草の指輪を嵌める。
指を絡めて手を繋ぎ、それを空いた右手で包み込む。
じわり、溶ける熱。
甘やかな感情。
絡まる左手の薬指。
「…う、ん…」
「ロゼ、」
「ラグ…?」
やっと開いた緋色の瞳はしっとりとラグを見つめる。
自分に繋がれた点滴の管を確認して、微かに笑った。
そして自分の薬指に嵌められたものを見留める。
「ラグったら…この指輪はなあに?」
マスクに篭る掠れた声が愛しい。
優しく笑って、よく見えるように手の角度を変えてやる。
「ヤメルトキモ、スコヤカナルトキモ…ってやつだよ」
おどけたように言うと、ロゼの目と唇が弧を描いた。
「ありがと…何より嬉しいわ…」
言葉を返す代わりに取った左手の薬指、その付け根に口吻けを落とした。
すると、ロゼが何か言いたげな――もしくは何か物欲しげな――顔をして、指先で自分の口を覆う透明のマスクをとんとんと叩く。
一瞬の後、その仕草が示唆する意味を理解して思わず笑みが零れた。
立ち上がり、体を支えるためにロゼの体を跨ぐように両手をベッドにつく。
マスクの上に口吻けて顔を離すと、ロゼは笑った。
それは綺麗な、笑顔だった。