Blanches fleur

□Count Down
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寒空の下で君を待つ


組織の舘――俺たちの『家』の裏の薔薇苑で彼女を待ち続けて、もう一時間余り。
任務に出ている彼女はまだ、戻らない。

「寒ィ…」

行儀悪く鼻をすすって、マフラーに鼻先を埋める。
その鼻先をくすぐる柔らかな香りは、

「…ロズの匂いだ」


目を瞑って、息を深く吸い込む。
うわ、俺変態っぽい、と呟く彼の眉間には、その軽口にそぐわず切なげに皺が寄っていた。


いつもみたいにさっさと片付けて来てくれよ。
新手の焦らしプレイとか、タチ悪すぎだろ。

だって、強いロズがこんなに帰るのが遅いなんて考えられない。

最悪の想像が頭を真っ黒に染めていく。

早く。
早く帰ってきて。
抱き締めさせて。

この悪夢から俺を解放してくれよ。



「…ほんとに死ぬとか勘弁だぜ、ロージィ…」

「やめてよ、縁起悪いわね」


背後から腰に回される細い腕。
柔らかな香り。
艶やかな声で俺を呼ぶのは―


「ただいま、ラグ。…ラグ?」

ロズが反応のないラグの顔を覗き込む。
その瞬間、ラグの両腕が振り向きざまロズをその胸に閉じ込めた。

「…怪我、してねえか?」
「平気よ。それよりラグ、あなたどう…」

彼女の肩を掴み、一旦身体を話して、ラグは叫ぶように言った。

「遅すぎんだよ、心配させんな…!」
「…ごめんなさ、い」

紅い目を真ん丸くして、ロズは反射的に謝った。
深く息を吐いて、彼は彼女の首筋に顔を埋める。
呟く言葉は、平生心の奥底に何重にも鍵を掛けて閉じ込めている弱い自分、そのもので。


「マジでさ…ロズがいなくなっちまったら、俺どうしていいか分かんねえよ…」
「私より、強いじゃない」
「力はな。…でもそんなに強い人間じゃねえもん…お前が思うより弱いんだよ、俺は…」

そこまでで言葉を切って、ロズを正面から見つめる。
彼女の顎を指で捕らえて、紅い目がまっすぐに自分を見つめているのを一瞬だけ受け止めてから


唇を、重ねた。



(Please,Please,all the time beside me)
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