Noir fleurs
□薔薇を抱いた、
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好きだと繰り返す唇が、また私の肌に触れる。
私ばかり貴方を求めて、貴方は愛撫を返すだけ。
ねえ、これじゃ私が娼婦みたいじゃない。
呟いた言葉は紫煙の匂いが染みついた部屋の空気に溶けた。
貴方はくすりと笑って、如何にも物分りよさそうに、お前と繋がるつもりないから、と吐き気がするほど甘く囁いてみせた。
ああ、そう。
そう返してはみたけれど、心に堪る靄をどうしても振りきれなくなった。
肌を重ねることは私を傷つけることとイコールだとでも思ってるのかしら。
ねえ、
なに。
私としてはね、私をもっと求めてほしいと思うの。
俺はお前を傷つけたくないからさ、なんて。
ばかなひと。
求められないことで傷つくことがあるってわからないのかしら。
大好きな海色のきらきらした瞳が、今は小憎たらしい。
あのね、こんなこと。
女に言わせるものじゃないのよ。
貴方が欲しいの。
たった九文字の言の葉は、彼の頬を染めるには十分すぎた。
ばか、煽んな。
呟いた彼の瞳は熱に潤んで、私 を 捕 えた。
(そう。それよ。)
(その支配者の瞳が見たかった。)