Noir fleurs
□コラボ小説(黄蓮)
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side:O
「あ〜、眠……」
主、紅葉が居ないのを良い事に、縁側でダラダラしていた黄蓮は庭先を猛ダッシュで横切っていく、白ウサギならぬ銀髪のうさ耳青年を目にした。
「何だ白兎じゃなくてうさ耳男か〜。………………って、はいぃ!?」
有り得ない。庭先に不審者が出た。さっさと追い出さないと紅葉が帰って来た時に怒られる。
「待てやうさ耳!!」
黄蓮は慌てて追いかけた。
黒い服を着たその男はかなり足が速い。だが、ギリギリ追いつけそうでもある。むきになった黄蓮はいつしかとうに庭から出てしまっている事に気付かなかった。
「あ、待てコラ!」
肩を掴んだ!と思った瞬間男は角を曲がり、黄蓮の手は空を掴んだ。
「っと、危ね〜……ん?」
つんのめるようにして何とか止まった黄蓮は、そこで漸く、自分が全く知らない通りに立っている事に気付いた。
「何処だ此処は?」
それなりに賑やかな並木道だった。しかし、行き交う人々の中に見知った顔は無く、彼らは皆デザインの似通った白い服を着ている。そして、道路の両側に建ち並ぶ店は圧倒的に本屋が多かった。次いで文房具屋、道具屋、といった具合である。
「ってか俺……どっちから来たんだ?」
周りを見回して見ても、全く分からない。建物の壁や屋根、石畳は全て緑系統の色で統一されており、樹や葉のモチーフが随所にちりばめられている。