Blanches fleur

□そうじゃないのに
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「もういい!」

シードルの部屋に高い怒声が響く。
今にも何かが零れ落ちそうに震えた声は、怒りに満ちていた。

原因はジン。
彼が女を誘い、血を吸っていることを知った彼女は怒った。

そして、理由を明瞭にさせない態度に激昂した。


「シードル、」
「お前なんか大嫌いだ!」

乱暴にドアを開け放って駆け出したシードルを、ジンは静かに見つめるしかなかった。


謝らなくてはと思っても、何から話せば分かってもらえるのか――『女誑し』とまで言われた吸血鬼にも、さっぱり分からなかった。
情けのないことだと思いながら、ジンは溜め息を吐いた。





シードルは早速後悔していた。
怒鳴って出て来たはいいが、あそこは自分の部屋だったと。


そして、最愛の…今は少しだけ嫌いな彼のことを思った。



何か。

彼は何かを言おうとしていた。


何度も口にしかけては、言いにくそうに口をつぐんでいた。



あれは、何だ。

普段彼はあんなことをしない。
聞けば何でも答えてくれるし、聞かなくても愛を囁いてくれる。

そんな彼が言い澱むこととは、何だ。
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