Blanches fleur

□左手の薬指で繋がる
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珍しくロゼが大怪我をして帰ってきた。
点滴を射たれ、呼吸を助ける透明なマスクをつけられて横たわるロゼは、まるでビスクドールのように生気がない。

白い肌に、飛び散って酸化しかけた赤錆びた黒が妙に映える。

拭ってやろうと手を伸ばすと、指先で微かな音を発てて薄い枯葉のように弾けた。
指先にざりっとした感触を残してばらばらになるそれは、かつてロゼの命を支える任を負っていたもの。
僅かに残ったそれの感触を確かめ、じっと見つめる。


おもむろに立ち上がったラグは、ベッドの近くにある窓から飛び降りた。
中二階にある病室からではそれほど高さはないはずだが、着地の衝撃を和らげられず足の腱が痺れた。

動揺している、と改めて自覚して、自嘲するように苦く笑う。
――大切な女が大変なのに、俺がしっかりしなくてどうするんだ。

目を閉じて自分に言い聞かせる。
目を開け、仰いだ月の光に軽い目眩を覚えた。

足元に繁る白詰草の花を一つ手折り、器用にリングの形に編む。
それを持って、今度は裏手の階段から病室に戻った。
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