七重の珠

□奇襲
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黒ノ宮の手前30mくらいのところ。
あと少しかなと漆夜に尋ねようとした瞬間、


轟、


と白煙、土煙が舞い上がった。
咄嗟に身を小さくして、頭を庇う。
その煙が晴れるとともに、少し離れた所に白い少女が一人、立っていることが認識できた。
漆夜が、息を呑む。


「彼女は…」
「だ、れ?」
「白ノ宮の魂裂き姫――…白珠姫です」
「しらたま?」


美味しそう。


「…あの方は、『こちら』にはつきません」


…じゃなかった。


「え……じゃあ、敵、なの?」
「そう、それも相当な実力者。――今の主と私とでは敵いません」
「そんな…」


視界が色を失う。
こっちに来たばっかりで、何も知らなくて、弱くて、矮小で。

これから、なのに。


「私、死ぬ?」
「その保障は出来ません。…私が、体を張って主を守りますから」


こんな時なのに。
不敵に微笑んだ漆夜を

格好良いと、思うなんて。

私の神経は、何所か断ち切れてるんじゃなかろうか。
自律神経、とか、その辺。



「さあ、御手を」
「どうするの?」
「私の手に重ねてください」


私が、というよりも漆夜がその大きな手(前足?)
を私の掌に触れさせた。

低い声が、私の耳元で指示を与える。


「とりあえず、逃げることを目的として戦います。あちらに隙が出来たら直ぐに逃げますよ」
「わ、分かった」


ぐっと唇を引き結ぶ。
戦い方なんて知らない。

でも。

きっと漆夜がいるから大丈夫。
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