Noir fleurs
□ストレンジ・ビースト
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「ここが医務室ですわ」
「私と組む方がいらっしゃるわけですか」
ふむ、と小さく呻って累が言う。
扉を控えめに叩くと落ち着いた声が開いてますよ、と応えた。
「失礼します」
「ああ、お待ちしてました」
にっこり微笑んだのは、青い髪に紫の瞳の柔らかな笑みが似合う男性医師。
だが、長い髪と幼さの残る顔のせいで女性にしか見えない。
そんな『彼』の名前は
「こんにちは。≪三鞭酒(シャンパーニュ)≫と言います」
「私は累です。神元累。お目にかかれて光栄です」
累は『彼』の右手をとって甲に接吻けた。
そんな扱いは慣れているのか、シャンパーニュは特に何か指摘することなく微笑みを返した。
「神元さん、ですね」
「いえいえ、どうぞ累と呼んでください」
「なあ…嬢ちゃん…」
何とも形容しがたい表情で禮はロゼに声を掛ける。
くすくす笑いながら、ロゼは言葉を返した。
「ええ、≪三鞭酒≫は男ですわ。お察しの通り」
「…まあいいか。楽しそうだしな」
「そうですわね」
何やら楽しそうに喋る累と、それに困ったような笑みを浮かべて答える≪三鞭酒≫。
禮は思案した後、彼らをその場に残すことを考えたようだった。
「嬢ちゃん、次頼む」
「承りましたわ。…シャニィ、お客様をよろしくね」
「ええ。いってらっしゃい、ロゼさん」
シャンパーニュはひらひらと手を振ってくれたが、累は『彼』を見つめたままだった。