Noir fleurs

□ストレンジ・ビースト
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「マドモアゼル、こちらが食堂ですわ」
「うわあ、広ーい!!」

薄いクリーム色を貴重とした食堂は広く、食事時でない今も談話室代わりに利用するものが多々見受けられる。
その端、厨房に一番近いカウンターに新聞を広げる男がいた。

「ゼスティ」
「おお、ロゼちゃん!どちらさんだ?」
「今度力を貸して頂くお客様よ。とびっきり美味しいお料理を作って差し上げてね」
「そんなことなら任しとけ!精のつく上手いもん、たんと作ってみせるぜェ」

ははは、と豪快にゼストリアが笑った瞬間、琳の腹が情けない音を発した。
一旦目を見開いた彼はまた笑って、傍においてあったエプロンを手早く身につける。

「ハハハ…腹ァ減ったか、嬢ちゃん。何か作るからちょいと待っててくれや」
「ほんと!?」
「ったくお前は…」
「良いじゃあねえか、兄ちゃん。腹が減ったときに食べる!これが幸せってヤツさ」

「そうそう」

琳が何か言おうとしたとき、割り込んで入ってくるものがあった。
カウンターに肘をついているのはラグ。

「…あなた、何してるの」
「いやあ、ロゼの姿がなかったからさ。探しに来たの」
「それはご苦労様」

呆れたように溜息をついて、ロゼは琳に向き直る。

「マドモアゼル、これが貴女と組む≪黒麦酒(ラガービア)≫…ラグですわ」
「あ、なに、今度のアレ?よろしく」
「よろしく!俺、琳!」
「…俺っ子?」

琳を指差して、ラグは禮を振り仰ぐ。
即座にロゼに指を注意された。

「まあ…気にしないでくれ」
「おっけー」

んじゃまあ、改めてよろしく、と二人は握手を交わした。
そのとき厨房の奥から芳ばしい香りが漂い、琳がそわそわし始める。
そう時間が経たないうちに大きな皿が運ばれてきた。

「うおおおゼスト!これとっときのオムライスじゃん!」
「なに?なに?おいしいの!?」
「すげー美味いぜ、それ…うわー、羨ましい……ねね、一口」
「だめー」

何だよケチ、ケチじゃないもん、とじゃれあう二人を見て累は呆れたように笑った。
それにつられてロゼ、禮も笑う。

流れる空気がふわり、柔らかになった。
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