痛み
□いっそ、その手で殺してください。
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ランボは、中小ファミリー所属のヒットマンである。
しかし、彼はヒットマンと言っても闘うことよりも媚びることの方が向いていた。
今ではファミリーのボスも黙認していることが一つある。
まぁ、それでボンゴレの傘下に入れるのなら儲け物だろう。
「リボ…っ…ぅぐ…」
ランボはボンゴレのヒットマンの愛人をしていた。
彼にとって女なんて選り取り見取り。
だから、ランボという存在が必要だった。
本当に"欲"を吐き出せる存在が。
「痛……っ……」
リボーンの気がすむまで、抱かれて、殴られる日々。
男だから容赦なんてする必要もなく、体中には消えない痣。
これが、ランボの仕事。
男なのに貫かれて、よがって、声を上げている。
なんて、惨めな姿だろう。
「黙れ…」
痛い、苦しい。
けれど、抱いた後のリボーンの優しさが欲しいから、ランボは抱かれ続ける。
ランボが密かに抱く淡い想い。
そう、これは仕事だけど利害の一致だけじゃないということだ。
「ぁぐ…っ!!」
たとえ、骨が折られようと、愛銃で足を打ち抜かれようと抵抗はしない。
余計に酷くなるから。
それ以上に酷い仕打ちが待っているから。
でも、酷い仕打ち受けた日ほどリボーンは優しい。
癖のあるランボの髪を梳いて、優しく口付けて、素直に謝ってくれるのだ。
その瞬間だけは安らげた。
幸せだと感じられた。
二重人格のような彼を愛していると思えた。
「やめてほしいか?」
「やめて……くれる、の?」
優しい言葉とは裏腹に、リボーンの冷たい眼差しがランボに注がれた。
背筋が凍るような冷たさで恐ろしくなる。
嘘でもそんな冷たい目で見てほしくはなかった。
愛想を尽かされて捨てられそうで恐いから。
少しも愛されていない気がして、死にたくなるから。
「やめるわけねぇだろ?」
「うっ!?…ぐ…ゴホ!」
リボーンの問いに意味はない。
いつもそう。
ただなんとなく気が向いたから。
痛みで飛びそうな意識の中、救いの言葉が耳に届く。
もちろん、救われることなんてないのだけれど。
「ランボ、お前は…俺が好きか?」
「好き…じゃない…」
その問いも気が向いたからなんだろう。
"好き"と言えば、嘲笑いながら暴力をふるうのだろう。
そして、最後には愚かで、無様な痴態を晒すんだ。
「っ……そうかよ!!」
「う゛…ぁああああ!!」
どちらにしても、待っているのは痛み。
ランボにはもう、リボーンの言葉の間を読むだけの意識は残されていない。
それが、何より不幸だった。
二人のすれ違いは、同じ距離を保ったまま平行線。
後一歩が踏み出せないまま。
「リボ…ーン…」
好きじゃないよ、愛してる。
だから、壊れるまで
愛して。
もっと、痛みをちょうだい。
もっと、殴って。
いっそ、その手で殺してください。
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