痛み
□雨が洗い流した赤は僕の存在意義さえも奪っていった
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彼岸花が散った。
真っ赤なそれがすべて落ちて、この瞳に映し出されるのは金色の髪。
愛しくて、可愛くて、可哀想な妹のはずだったのに…
「罰を受けにきました…」
どうして、お前がいるんだい?
俄雨…
私の瞳に映し出されたのは、深い深い黒髪。
白我聞には彼岸花と同じ、赤い色がべっとりと付着していた。
「俄…雨…?」
愛しい彼を斬り捨てたのだ。
彼を愛したこの手で、確かに斬り捨てた。
ドサッ
「っ…うぐ…ぅ…」
地面に崩れ落ちた小さな身体。
虚ろな瞳で語る言葉は、雨音で耳に入らない。
聞こえぬ声は私を詰り罵っているように思えた。
許さないと、言われた気がした。
「俄…雨っ…あああああ!!」
意識をなくした俄雨に縋り、ただ、ただ、自らの罪を悔いた。悔やんで、贖い方も分からず、共に死のうとすら思えた。
「…俄雨…いっちゃ…いけないよ…」
雨は止め処なく降り注ぎ、私の身体に付着した赤を洗う。
雨水は赤く染まり、身体を伝い、地に吸い取られて消える。
忘れてはいけない、消してはいけない罪だ。
「一人で…は…逝かせない…」
雨が流した赤は俄雨だ。
血の一滴さえも、失ってはいけないものだ。
無遠慮に降り注ぐ、雨が洗い流した赤は、僕の存在意義さえ奪っていった。
(いっそのこと、私も共に逝きたいよ)
end