響き

□EGOIST DREAM MAKER
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人の感情には限りがある。特に強い恋愛感情はいつか狂気に変わる。
そいつが俺に対して抱いている感情の名前なんて知らない。
知りたくもない、知ってしまったら、すべてにおいて取り返しがつかなくなるから。



「逃げないんですか、ボンゴレ十代目?」

「…逃がしてくれるのか、六道骸?」



そいつは俺の部下で昔は敵だった。
その頃から普通ではないと思ってはいたが、まさか監禁されるとは思ってもみなかった。
いや、分かっていたらホイホイ着いていったりしないけど。



「それは、イヤ…ですね。」

「…なら、聞くな。」



呆れて何も言えない。
此処がどこかも分からない、俺からの連絡が途絶えればボンゴレ総出で探すだろう。
だが、こいつのことだ攫った痕跡を残して来る訳がない。
携帯も破壊されているからGPS探知にも期待できない、所謂、詰みってことだ。



「クフフ…冷たいですね」

「変態に優しくしろなんて、習った覚えはない。さっさと、コレ外せ!!」



両腕を一纏めに鎖で縛られ、コンクリートが打ちっぱなしになった部屋に転がされる身になってみろ。
寒いし、腕が痛い。
いや、とにかく此処から逃げたい。



「嫌ですよ、外したら逃げるでしょう?それにしても、今日の君はいつもより饒舌ですね?話していてとても楽しいですよ。」

「っ…別に、こんな状況だからだろ。」



いつも以上に喋っているのは、二人きりのこの状況がひどく不安だから。
こいつは…
六道骸は変に勘がいいし、人の心を簡単に見透かす。
逆にこちらは何も分からない、心も思考も予測できないから不安なのだ。
それだけじゃない、こいつは俺にとって危険人物だから。



「そうですか?では、そう言うことにしておいてあげますよ。僕には脅えているようにしか見えませんがね」

「調子に乗るなよ、骸。だいたい、何のつもりだよ…こんな事して許されるとでも思ってるのか?」



ほら、見透かされている。
平然を装っても、無駄。強い口調で話を逸らして、ただ気づかれないように息を潜める。
あの話にだけは触れられたくない、口が滑ってこいつに話してしまったことに、今更ながら後悔した。
早く逃げたい、こいつに弱さをさらけ出すなんて真っ平だ。



「何のつもり…?
少しは頭を使ったらどうです?
他人に答えを求めても、それは他人のものでしかありませんよ。
君の答えは君自身の中にしか、ないのですから。」

「は、変態の脳内を理解しろ…なんて、常人には無理な話だと思うんだけど?」



せめて隼人達がくるまでは時間を稼がなきゃいけない、なんて考えも筒抜け。
すべて分かっているとでも言うように、こいつは笑う。
妖しく、静かに。


「クフフ…手厳しいですね。
さぁ、ボンゴレ。
茶番はそろそろヤメにしましょう。」



声がでない。
カタカタと震える身体、ほら、こいつは勝ち誇ったように笑う、隠しきれない。
すべて、分かっているというような、決定的な口調が怖い。



「っ…茶番だ…と…?」

「本当はもう、気づいているのでしょう?
僕が君を監禁した理由に…」



理由?
そんなもの、監禁された時から薄々気付いてはいた。
でも、ボンゴレのために知らぬフリ、自分のために気付かぬフリで、あとは自嘲気味の笑顔を浮かべて。



「さぁ、ね…
俺には、わからないな…」



同じ、大丈夫。
いつも通りの、笑顔を浮かべていれば、問題ない。
誰も何も、感づきはしないんだ。

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