ぺるそな3

□I Want Save”DEATH”.
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例えばあの時、僕が罪の重さに耐えられず、自ら命を絶ったとしたら、この世界はどうなっていたのだろうか。

やはり現状を維持したまま、世界は破滅の道を辿っていたのだろうか。

それを考えると、どちらにしろ死ぬのなら、とことん抵抗し続けるのも悪くないと思った。
それに、ごく個人的な別の理由も相俟って、僕は一つの結論を出した。


「僕は、綾時が一番大事だから、僕の大事な友達だから、殺せないよ。」

「やっぱりそうか…僕ね、楽しかったよ。キミと過ごした影時間、学校、全部楽しかった。」


決断の日、綾時は僕の部屋のベッドの端に座り、微笑んだ。


「……………。」

「そんな顔しないでよ…辛くなっちゃうでしょ?キミに貰った人間のいろんな感情だけど、この感情はいらなかったかな…」

「…綾、時…」


綾時があまりにも穏やかに笑うものだから、涙腺が緩んで、泣きそうになった。


「あ…嘘だよ?君に貰ったもので要らないものなんて、何一つ無いから…」


泣きそうになった僕に驚いたのか、綾時は慌てて弁解した。

嘘だってこと位、分かってるよ。
だって君は10年も僕の中に居たんだから。
わからない事なんて無いよ。


「…綾時を…殺すって選択は、綾時にとっても楽な選択だって事は分かってる…選択をくれる事自体凄いって事も。でも、僕は忘れたくないんだ。綾時と過ごした日々、今までの戦い、犠牲になった人達の事。」

「…君らしいね…僕ね、君の中にいた10年、君と過ごした1年、凄く幸せだった。死の象徴である僕に、人としての幸せを教えてくれて、ありがとう。」

「綾時…」


ラウンジに戻り、少し会話をすると、綾時はやはり笑顔のまま去っていった。


「…良いお年を…。」


最後に見た『人』としての『死』は、哀しい程に優しく微笑んでいた。

その笑顔を見た瞬間、彼に対して深い罪悪感が芽生えた。


(…ごめんね…ずっと…一緒に居たのに…1人にして…)


綾時が寮から、この世界から、更には寮の者以外の人の記憶から居なくなって、影時間になった。

皆は自然と解散して行ったが、僕は最後まで綾時が出て行ったドアを見つめていた。
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