ぎんたま
□ケータイは最早必需品でさァ。
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その日は、俺にとってあらゆる意味で記念すべき日となった。
「は〜あァ、潜入したは良いけど…攘夷派の連中なんて来ないと思うンだけどなァ〜あふ…暇。」
欠伸混じりに呟いた俺が今いる場所は、高級料亭なべや。
攘夷派の連中の会合があるらしいという情報が松平のとっつぁんから入ったらしく、副長から潜入を命じられた。
それが三日前の話。
潜入はしたが、三日経っても攘夷派らしき浪人が来る様子も無く、毎日あまりにも暇すぎて、今朝、誰もいない時間を見計らって少しだけ息抜きをしようと庭へ出た。
そして懐からいつも持ってる『真組選ソーセージ』を出して食べようとした。
「ん〜!!久し振りの太陽光!!」
そう、三日振りに俺は外へ出た。
今まで天井裏や、軒下など、隠れられるところにずっと居たからだ。
伸びをしたら、関節がバキバキ鳴って気持ち良かった。
ふと庭を見渡すと大きな池があった。
よく裕福なお家やこういう高級料亭にあるような、よく肥えた鯉が沢山いる池だ。
無論、この池にもよく肥えた大量の鯉が馬鹿みたいに悠然と泳いでいる。
その様子を見た俺は、ちょっとした好奇心から持ってたソーセージを少しだけあげてみた。
「う…ひィ…!!」
高級料亭の鯉なのにエサを貰っていないのか、池にいる鯉たちが一斉に集まって来てしまった。
その様子があまりにも衝撃的だったので、思わず写メ。
そしてソーセージに群がる鯉の水音に店員やら人が集まって来てしまったので、人目につかないうちに屯所へゴーバック。
勿論収穫はこのキモい鯉の大群の写メのみ。
「ふっ…ふくちょおぉぉお!!!山崎退、ただいま戻りましたァ!!っと…ちょっ…コレ見て下さ…キモっ…!!!」
いち早く副長にこの写メを見せようと、副長の部屋の障子を思いっ切り開けると、そこには真面目に書類の整理をしている副長のすぐ横でアイマスクを額にのせケータイをいじっている沖田隊長の姿があった。
つーかなんで副長の部屋にいるんだ隊長…
「おゥ山崎お帰りなせェ。よっしゃ無事帰った記念に写メるぜィ、はいミントン。」
カシャッ
「うわっ何なんですか急に…って隊長も居たんですか。」