(なんて美しい世界なんだろう)

天井からまわりが全て、そして横たわるベットさえも全てが真っ白で、病院、そんな世界にひとつだけ汚れた俺がいるんだ。
綺麗な世界は俺を拒絶しない。
それを良いことに、まだ大丈夫と調子に乗ってこんなところに未だにいる。
退院はしたくない。
ここにいれば現実なんて全部見ないでいられるから。全部がなにもなかったことにできるのだから。
身体を起こして自分を見ても、そう自分はここにいるのに、―見たくない現実は彼はこの前―なんて思い出したくも無い。見ない振りをして、ここにいて、ずっと貴方の帰りを待っていたい。

と、ひらりと花びらが舞った。
薄桃色の小さな、可愛らしい。

それは起き上がった俺の膝に乗る。
綺麗な薄桃色は白い世界に紛れ込んだくせに汚れてなんかいないし、全く醜くも無く、むしろ妖艶に美しくその場に何枚もの花びらが舞い続けている。
さくら。
この花にどれ程の厭味を込めて世界は俺にこれを舞わせたのだろうか。
現実から逃げるなと言いたいのか。

その時不意に、貴方との、
あの時の会話が脳裏を過ぎった。



「骸は俺が死んだら、悲しい?」
「悲しいですね。僕たちを引き裂いた元凶に対して発狂します」
「俺もね、骸が死んだら、悲しい」
「どれくらい悲しいですか?」

「誰かに殺されてしまいたくなるよ」

つい言った言葉では無い。
紛れも無い本心を言っただけ。
他に、何を、言ったっけ?

「死んでしまったら」

何になりたいかと、聞いた。
俺は何になりたいか考えられなかったし何になりたいのかなんて考える必要ないと思っていたから、幻想を幻想と理解して好きなだけあり意外と現実家な貴方も、無いのだと思ったのだけど。
意外に即答で、答えは出た。
可愛らしい答えに笑った。
でも、小さな子供は言わないようなものではない、小さな子供が成りたいとはきっと生りたいとはきっと言わないようなものだった。



「僕は桜に…なりたいんです、綱吉君」



ああ、なんだそんなことかと笑いが漏れた。ひとりの病室で小さく笑う俺はまわりから見たら不気味だろうがそんなの関係ない、ねえさくら、そうでしょう?
この木のさくらが全て散りそうになったら、さくらの木に登ろう。

そこから何をなんてわかりきったことを。

「俺、生まれ変わったら桜になりたい」













(永遠にもう、俺と貴方が引き裂かれだなんて、しないように)

I am dead with you.
It keeps dying.
and,It is through all eternity.


end

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