お祝いです、
と骸が黄色い包みを
わたしてきた。

行ってしまうのに
そんな笑顔で
言わなくたっていいじゃんか、
と思ったけど
なんか癪だから厭味に
おもいっきり笑って
ありがとうって言ってやった。

気付いていたのか
気付いていなかったのかは
わからなかったけど、それでも
くすくすと笑って
そのまま立ち去ろうとしやがったから、

つい、思い切り叫んだ。



「なんで平然としてんだよ…!!」



いきなり
だったからか、
骸は一瞬目を見開けば
睨む俺を簡単に無視してまた
犯しそうにくすりと笑えば近寄り、
首を傾げて妙に優しく小さく呟いた。



「なにがですか?」
「だから…、もうしばらく会えな」
「何言ってるんです」



平然と、まるで俺がおかしいみたいに笑っていてつい息を飲んだオレを見て

頬に手を置けば
軽く唇をあわせてからまた
踵を返して

後ろ向きのまま手を振った。



「何の為にそれを渡したと?」
「え…?」
「綱吉君は僕に会いに帰って来ますよ」



よくわからなかった。
何が言いたいのかわからなかったけど、でも多分その台詞を吐いている骸の表情は今恍惚として満足してると思ったら…

と、またムカついて
そこら辺の石を蹴った。ら
自分に帰ってきて泣くかと思った。

家に帰ればリボーンが
玄関にいて顔を歪めてしまえば
殴られて泣いた。

こんなことで
泣くなと言いながらも
こんなことで
泣いてるんじゃないとわかってくれたのか、リボーンはそれ以上何も言わなかった。



そして、出便の日。

獄寺君は大泣きして
山本は笑いながら頭を撫ぜてくれて
恭子ちゃんとハルは泣いて
Dr.シャマルは苦笑いで
雲雀さんは控え目に
他も皆、すぐに会えるからと。

でも、アイツは来なかった。

気にしてたかって言われたら、
それは、気にしてたよ。
だって好きだから
こういう時ぐらい会いたかったし

でも来なかったし。

いじけていればハッと
骸の顔と一緒に
例の渡された包みを思い出す。
骸を忘れなくなる物って、
まさか骸のブロマイドとかじゃ
ねぇよなとがさがさと
あまり物も入っていない鞄を
必死に漁って、
それを個室だからまわりも気にせず
破って開けた。



「…は?」



思わず間抜けな声を出せば
それをガン見する。

赤いベルトに銀色の金具で装飾された表現しようとすれば、可愛らしい、感じの女の子用みたいなカチカチと音を鳴らす

綺麗な時計。



「わけわかんない…」



頭をがしがしと掻いて唇を噛めばアイツを理解できないのがこんなにムカついてた
と気付いてこれを理由にして帰れたのに、と思っていたのも気付く。
またそれが恥ずかしいやらなんやらで
イライラしてきて
それでも
やっぱ耐えられなくて
時計を手に付ければバタリと
布団に倒れた。



「もう…お前なんか知らねえよっ…」



なんて骸の言ったことは実現されることになるから結局
この台詞は天の邪鬼なんだけど。





















3日たった時だった。
その時計の正確だった秒針が急に朝から、カチ、カチリ、と

不規則に動き出した。

なんだよ、
と困れば時間源が
これしかないために
中を開けて直していれば、
綺麗な青い糸が顔を覗かせる。

まさか、と思いながらも
それをひっぱれば、ネジがハマってカチカチとすぐに直って平然となにもなかったかのように軽快にまたまわりだした。



それはまるで、壊す為に
この時を想定して、壊れるように

細工されたようで。
「…嗚呼もう、馬鹿野郎…」



ドキドキと心臓が止まらなくて
早く忘れてしまえと
心臓を握って
また時計を

腕に付ければそのまま一気に走って
リボーン達の処に必死で帰れば
荒息を必死に押さえて

骸を、頭から離す。

離せなくたって忘れらんなくたって
時計は時間を表す物だからと
言い聞かせて




















それからその時計は二日に一度は必ず壊れた。一番壊れていると一日に二回。カチリと秒針がオレを呼んだ。
その度に、
心臓が痛くて辛くて苦しくて
本当にあの男は
それがわかっているくせに

会いには、こない。

時計が壊れる度に、
貴方を思って壊れそうになる
心臓を握り込まれて潰れそうになる

気管がひゅうひゅうと鳴って
どうしようもなくなって
何故か止めど無く溢れる涙を
拭う指が使えなくなる



「ねぇ、リボーン…オレ、」



帰りたい。
帰らせてください
今帰らないと死にそうだよ
この時帰らないと苦しくて苦しくて



骸に、会いたい。





















桜散る季節の国に足を運んで、
もちろん真っ先に
文句を言う為に貴方の処にいった。



のに、涙が止まらなくて
折角会えたのに



それを見て貴方はまた笑った。
「ほら、やっぱり」
その笑顔と台詞にまたイラッと
したから泣いたまま腹を

蹴ろうとしたら
がしりと足を押さえられて
腕を掴まれて
思い切り唇を合わせられた。

歯がガチンと当たって、
いたっ、と言えば
また笑われて、

つい顔が熱くなって。
でも本当に



「…会いたかった」



「知ってます」



もう一度、キスをすれば
カチリと

時計が止まった。









end


後日談。

家の近くの時計屋に時計の修理を頼みに行くことにして、頼んだ。

すると時計屋の主人が軽く笑って(山本に似ていた、そうだ皆に会いに行かなきゃ)その時計をしばらくジッと見てからやっぱり、とこちらを見た。



「これ、この前オッドアイの男の人がうちで買ってったやつだね…」



一瞬驚いてから、苦笑いで
だったらこんなに壊れるのをわたさないでくださいよ、と返したら
そのおじさんが苦笑いをして頬を掻いた。



「いやでもね、それは安くてお勧めできませんよと言ったらその人が

『いいんです』

っていうんですよ。なんでですかって聞いたら含んだ笑顔で笑って

『だって僕の愛しいあの人が、その時計が狂う度に僕のことを思い出してくれるのですから』

って…って大丈夫ですか!?」



途中でもう蹲るしかなくて
叫ばれた声に顔をあげることも

どうしてもできなくて

恥ずかしいしどうしようもなくって
蹲ってしまい心配掛けて
こんなことって
全部全部全部



お前のせいだからな、
骸…っ!!












end

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