昔からの貴方は今も、
本当に美しい。
「…綱吉君」
何より美麗で綺麗で奇麗な瞳を閉じるその動作といっしょに動く瞼の睫毛が、貴方のキャラメル色の瞳によく似合う。
猫のように気紛れで
犬のように人懐っこくて
華のように美しく
兎のように寂しがり屋
兎は、寂しいと死んでしまうんだよ。
貴方は寂しいと
死んでしまうのだろうか?
「綱吉君」
「…なぁに?」
こんなにも美麗で透き通るような声でも、綺麗な全てはもう貴方の昔を物語るものを無くしてしまった。どんな瞳もどんな言葉もなにかが単調に冷たく響く。優しい言葉をその唇でなぞっても
何かが冷たい。
「僕は、綱吉君が好きですよ」
「俺も骸のこと好きだよ」
きっとこのずっと何かが纏わりついて来るような感覚や貴方と僕の間にあるように見える僕にもわからない「何か」の蟠りは多分いつまでもなくならない。
綱吉君の真っ白な肌に手を触れて微笑めば真似するかのように綱吉君もにっこりと口の端を上げる。
と、口を開いた拍子に貴方の声が苦しいくらいに白く何も無いこの無機質な部屋にあまりに心地よく響いた。
「ねぇ、骸」
綱吉君は僕の返事を待たずに、
ただその瞳と声と鏡に映らない冷たい話を続けた。
「俺のこと、どれくらい、好き?」
「…え?」
つい息が言葉を遮って、貴方から視線が外れてしまい自分が戸惑っているのに気付いた時は、もう、
貴方のの寂しそうな顔が目に入った。
「俺が好きじゃないの?」
違う、と言おうと口を開こうとしてもその前に綱吉君はすでに、泣いていた。
全く違う、
違うんです。
その量がその質が
大き過ぎて、
表したくなかっただけなんです。
簡単に表わしたくなくって。
「違います」
「違く、ないよ」
「違いますって」
「嘘…つき…」
冷たい、声に
その冷たい、台詞は
流石に心臓が揺れて悲しい。
少し熱くなった涙腺に小さく溜め息を吐いてから違うんですともう一度口を開いて否定を出そうとすればそう思った瞬間、
貴方は動かなくなっていた。
「綱吉君…!?」
驚いて貴方を強く抱き締めれば、
小さく寝息が流れていて。
「………、…っ、」
本気で…
びっくりした。
だって
死んでしまったかと、思った。
猫のように気紛れで犬のように人懐っこくて華のように美しく 兎のように寂しがり屋そんな貴方のことだから、
猫のように気紛れに僕をおいて、犬のように持ち前の人懐っこさを最後の一言に、華のように美しい、その姿のまま、
兎が寂しいと死んでしまうように
僕の前から消えてしまったかと思った。
「ねぇ、綱吉君…」
貴方は寝ている。
どんな夢を見るのだろうか?
猫になってのんびり生きる夢か?
犬になって皆と幸せになる夢か?
華になり永遠に咲き続ける夢か?
それとも兎になり、寂しさの余り
僕に殺される夢か。
なににしろそれは、夢だから、
早く起きて、もう一度
僕に「好きだ」と言って下さい。
僕は綱吉君が
世界中の人生上の夢生上の
この世のあの世の
なによりも
愛している、と、
伝えるから。
君が
兎のように
死んでしまわぬように。
(僕の為の寂しさなんかで)(僕に)
殺されて、しまわぬように。
end
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