dariing、you.
こいしいなみだを拭わせて、
唇で掬って愛させて、



(つなひばつな、切愛死)




















「好きなら、別れろ」

ハナミズキが咲いたのは、貴方に告げて貴方がくれたなみだのあの日から五日後
太陽の燈籠に照らされて鮮やかな薄紅と青紫が雫を揺らして煌めいて



それは俺の頭の中で唐突だったわけではないけど何故か何よりも唐突に世界を揺るがしてくる。
通い慣れたこの坂道を上るにも足が異様に軽く緩く感じて、早く時間が過ぎているかのような錯覚に陥ったりした。校門では制服検査を行う生徒が並んでいるから、学ラン、風紀委員、あの人をどうしようもなく連想させざる終えなくって、青い空に背中押されて広い蒼に天を仰いで急に重くなった脚を引き摺り、必死にいっぽいっぽを踏み出しながら自分のいるべき場所に向っていった。
俺のいるべき場所は貴方の隣りではないと気付きました。つまりもう俺は貴方と一緒にいることはできません。意味が無くなってしまったんですから、



「だからさようならしませんか。」



愛してるからだなんて言いません。
好きだからだなんて言いません。
言い訳なんかするわけないじゃないですか俺にはそんなもの必要がないんですから。さっき言ったことが、俺の中のすべてなんですさあさようならしましょうかだって後ろめたくなんかないですし、別に後悔なんかしていませんし、悪いことなんかしていませんから、だから
この涙は何でもないです。
哀しくなんてありませんから。
今泣く程動悸が激しくなって台詞を拒んでいるなんて、辛くて苦しくて貴方に希望を持たせてしまうようなことは絶対口が裂けても、言いません。

世界は俺たちを拒みました。
だから一緒にいれないただそれだけ。

そうそれだけ。
しょうがないからそれしか見えないからと一点の曇りもない青空を見れば異様に虚しくなり、また脚を引き摺り服に隠れた白い靴下が落ちる感覚に気持ち悪くて身震いしながらもこの想いを胸に詰め込んで破裂しそうなくらいに膨れさせた。

「あ、10代目っ」
「ツナー」

教室に入れば山本と獄寺君がにこにこと微笑んで俺のそばに駆け寄った。五日まるまる学校を休んだからか、二人は心配していたらしくいつもよりも余計にそばに寄ってきてからの少しばかり無理やりな笑顔がなんとなくわかって、なんだか悪いなあと心臓がきゅんと鳴った。
少し困った顔で笑ってから何も言われていないも、大丈夫だからねと言えば安心したようで幸せそうに笑った。
こんな俺にそんなに優しくしてくれて嗚呼なんだか報われない。
俺があの人を好きな理由まるで俺の想いみたいにこんなにも報われない。
あの花開いたハナミズキの薄紅みたいにあまりにも報われない。
なんだか低くなった悲しいテンションにぷるぷると首を振って席に勢い良く座って机に締め付けられるみたいにきしきしと痛い頭を押さえて突っ伏せた。

「っとそうだ10代目」

とその時に上げた獄寺君の今気付いたかのような台詞だが、わざとなのがみえみえのその口調に笑うより前に続きが気になって顔を上げて(脳が揺れる)獄寺君の瞳をじっと見つめる。
獄寺君は、一度気まずそうに唇を噛んでからゆっくり口を開いた。



「雲雀が、…五日前からいないんです」



何かが、千切れてしまいそうになった。
ぶるりと、背筋が震えて、
苦しいくらいに息が詰まって、
瞬間目が痛くなり頭がありえないくらいギシギシと音を立ててどうしよう苦し過ぎて口を開いても喉が振動してくれないから。

「応接間に鍵が掛かってるからいるかいないかわかんないらしいんですけど、五日間見たことある奴がいないらしくてなんか荒れ放題で」

唾が飲み込めなくてつい咳き込んでごほごほと口を押さえれば察したのか申し訳なさそうな君が目に入ってきてこちらが申し訳無くなる。

「……っ、すみません、!!」
「ぁ…、っ大丈夫だから」
「御気分が悪いんですか?俺のせいですよね…すみません、すみません10代目…」
「ううん。獄寺君が言ってくれなきゃ俺知らないままだったし…感謝してる」
「…ありがとうございます…でもあの」

言葉を切った獄寺君は伏目がちに辛そうに面想を見せた後、自分の鞄から腕を伸ばして俺の机に五本の花を置いた。

「前の前から一昨日と昨日と今日と…一本ずつ置いてありました」



ハナミズキの、
はな。

淡い薄紅には血を連想させられて、蕾は開かずにひらかずに平和にただ俺の机の上で毎日を俺の机から始まり鞄の中で過ごしたのに無くならない生気に少し面倒臭そうにうなだれていた。

「、これ…雲雀ですよね」

なんでわかるのと瞳で聞けば苦笑いをして、しゃがんで獄寺君は視線を合わせて俺に優しく呟いく。「では、愛故と言うことにしておきましょうか」俺は一度きょとんとしてからくすりと笑ってただありがとうと言った。

足は貴方を追えなかった。
想いも貴方を追えなかった。

追いたくて離したくなくてそこに居れればそれでよくて、なのに世界に拒まれた俺たちは愛し合うことができなかったからだと今は言い訳したいと心から深く涙が止まらないくらい思ってしまった。
涙が止まらなくて愛が止まらなくてとにかく大好きで愛しくて何より思いが止まらなくて走り出すしか無くて、拒まれて離れたのにこんなにも貴方のことばかり考えてしまっているんです。



「リボーン」

止まらないから許してよ俺は一生
世界を壊しても敵にしても

「ねぇリボーン」

お願い
何を対価にしてもいい
傷つくぐらいならいくらでもいい
恋しいあの人に愛されないより今傷つく方が、今苦しんだ方が百倍マシだから、
俺にあの人を、

「はじめて約束破っていいかな」

走り出した足は、
既に貴方を追っていた。



「勝手にしやがれ」



















bugiardo lacrima2

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