to:Tuna side
好きだと言って嘘でもいいの。
ろまんちっくに微笑んで。

好きだと言って滑稽でもいいの。
貴方の声が俺の為に、鳴るのなら。



依存するな、俺。



「恭弥おにいちゃんの好きなものは?」
「恭弥おにいちゃんが好きな人は?」
「恭弥おにいちゃんを好きな人って?」

もう貴方のことが好き過ぎて壊れてしまいそうなの。貴方のことばかり考えてしまうの。貴方がいないだけで心臓がはち切れてしまいそうなの。何か一つ褒められれば飛び跳ねるほど嬉しくて、何か一つ会話するだけで涙するほど幸せなの。
おにいちゃんの為ならなんでもできるって言い切れるんだよ。おにいちゃんが誰より一番だって、言い切れるんだよ。
そんな俺はブラザーコンプレックス。

「恭弥おにいちゃん、あの、放課後は」
「…放課後は会議だよ」
「じゃあ、明日は…」
「ごめん綱吉、忙しいんだ」

貴方を取り巻く人が羨ましくて貴方のそばにいれない自分が恨めしくて苦しくて影で涙が止まらなくて、わかってるんだよ貴方には貴方の世界があって、俺なんかはその中のたった一部だって。
俺なんかは億千のものの中で数えてしまったら少数単位の価値しかないんだって。俺が貴方の最大の一番になんかなれないって。そんな綺麗にできたものは完璧なるべたなストーリーでしか存在しないことだってちゃんとわかってる。

なのになんでこんなに
好きになっちゃったんだろう。

忘れられれば楽なのに、吹っ切れれば楽なのに、頭に浮かんでしまうのはいつも貴方なんです。
ねえ、恭弥おにいちゃん、俺はあなたをこんなにも好きだとこんなにもだと気付いてくれていますか。
ねえ、恭弥おにいちゃん、俺があなたを好き過ぎて部屋でいつも泣いていること知っていますか。
ねえ、今俺が貴方にお願いごとをしたら貴方は俺のお願いを何番目にもってきてくれるのですか。
そんなことばかり頭を霞めて情けない。自分があまりにも馬鹿みたいで、言い聞かせることに必死。
よかったら俺を突き放してください。屋上から突き落としてください。何度でも殴ってください。俺にうざったいと、はっきり嘘でも言ってください。
依存するな、俺。

世界で好きになった人が、好きになった人を好きでいてくれる確率なんてそれも少数単位なんだね。こんなにも俺がおにいちゃんを好きでもおにいちゃんは思ってくれていないのでしょう。
いつも貴方で止まるメール、ひともじひともじに貴方に嫌われたくないとそれだけが詰まってはじけないように目をぎゅうと瞑ってから打つ。

「ねえ、俺おにいちゃん聞きたいことが、あるんですけど」
「なに?どうしたの?」
「俺は…、」

いったい貴方の何ですか、と、聞けたらどんなに楽だったんだろうか。
止まった指先が震えてその続きを拒んで冷や汗が背筋に嫌な寒気を残しながら頬を伝って、いつのまにか弁解と謝罪が画面に写し出されていた。

「やっぱなんでもないです。仕事を続けていいです。俺のせいで手を止めちゃってごめんなさい」

嫌われたくないだけじゃなくて何より俺を誰より一番にしてだなんて、
戯言にもほどがある。



















「…、おにいちゃん」

久しぶりに家に帰ってきたおにいちゃんに目一杯の笑顔を見せて、今日あったことをつらつら連ねて喋ってゆく。
他愛も無い静かで変哲もない貴方のいない世界の会話。だってあまりにも貴方が俺から遠過ぎてそんなことしかできないの。そんなことすらできないの。
山本が獄寺君が京子ちゃんが、貴方の知らない名前を何度も連ねてしまう。本当は誰より貴方といたくて貴方としたくて貴方じゃなきゃ意味が無いことでさえまるでその人達が楽しいみたいに話してしまう。
気付いてくれるわけないのに、俺は延々続けるしかない。楽しかったよ嬉しかったよ幸せだったよすごくすごく良かったんだよ、気付いてくれるわけないのに。
あなたがいなくちゃいみないだなんてきづいてくれるわけないのに。
ほんとうはあなたといっしょがいちばんいいだなんてきづいてくれるわけないのに。

「ねえおにいちゃん」
「ん?」
「俺はおにいちゃんが大好きだよ」

誰にでも言ってるんじゃないんだからね。好きだなんて、心を込めて言ってるのなんて貴方ぐらいなんだからね。そんなの知るわけないのに。

「僕も綱吉が好きだよ」

俺だけに頂戴。
その言葉を俺だけに頂戴。
貴方も俺に依存して、嘘でもいいの、何度でも愛していると囁いて。
触らないで触らないで俺のおにいちゃんに触れないで。そんなことしたら俺はとても泣きたくなってしまうんだもの。俺がそこで泣き出してしまったらいけないのはわかってるだから触れないで。

嘘を吐いてよおにいちゃん。今日は何をしたのと聞いたらずっと学校の仕事をしていたよと言ってよ。
嘘を吐いてよおにいちゃん。俺なんかに依存されてうざったいんだから何度も俺に嘘を吐いてよ。
好きだよ愛してる一番好きすごく好きなにより好き誰より好き本当は君が一番なんだと本当は君に会いたいんだと。君の為なら死ねるんだと。どんな願いも僕がかなえてあげると。

ねえ、おにいちゃん。
嘘を吐き続けてお願いだから。

最後だけ本当をくれればいいよ。
死んで欲しかったなら最後にしてね。いなくなって欲しかったなら最後にしてね。今だけは騙されて生きていなきゃ俺は多分もう無理だから。
世界がくるりと反転して、泣き出したい衝動に襲われればもうそれは切れていた。
貴方が気付いてくれればいいな。

好きだよ大好き、誰よりも。
そんな俺は貴方依存症。


end

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