正午過ぎすぐつまり午後。
俺は皆と弁当を食べ、次数学で嫌だなあなどと愚痴を言い合い普通に、そう普通に過ごしていた筈だった。
食べ終わってからかなり話していたらしく予鈴に驚けば、立ち上がり欠伸をしながら教室に戻ろうと歩き出した時。予鈴に続いて声が流れた。

「何年…何組だか忘れたけど沢田綱吉、今すぐ応接間にこないと咬み殺すから」

一瞬にして近くにいた人間は俺を見たけど、多分かなり格好悪いぐらいに蒼白になっていたと思う。
だって雲雀さんからの呼び出しなんてろくなことがあったためしがない!
でも行かないと本当に咬み殺されかねないからと、引き止める獄寺君を宥めて重い足取りながらも小走りで応接間に向かった。

着いてからしばらく固まっていたけど、今日こそは雲雀さんに呼び出し方を変えてくれと注意しようと心に決めて、ノックをせずばたんっ、と扉を開ければそこには貴方が座らず立ってこちらを見ていた。
嫌いな筈の桜をバックに。

「ノックぐらいしなよね、綱吉」

咎める感じの口調なのに、表情は優しくて緩く口に弧を描いたその瞳はとても弱い。何故かはわからないけど、すごく自然な綺麗な表情だった。
その瞳に押されて一瞬固まればもう雲雀さんのペースに巻き込まれてしまう。
指を立てて呼び出し方の注意をしようとするも全く意味のない、それごと雲雀さんの両手に包まれて動けなくなってしまった。
右腕が頭の後ろにまわってきて、ぽすんと雲雀さんの胸に顔を埋める形で片方の左手は腰を抱き寄せて来て、がっちりと派外締めになっている上に、耳元でドクンドクンと貴方の体温を示す脈が流れているのが嫌と言うほど聞こえて、顔が熱くなる。

「ねえ綱吉」
「はっ、はいっ!!」

いきなり呼ばれた為にぴょんと跳ねて声をあげればくすくすと笑った声が上からした。笑わないで下さいっと言うもその声は力無く部屋に溶けていってしまって。
やはり残るのは静寂と、熱くて早くて切ないその鼓動。よく考えたらこの格好、俺の鼓動もかなり聞こえるわけで、それがわかったらどうしようもなく鳴る心臓がどうにもならなかった。

「あう、ヒバリさ…」
「プレゼント、君がいいな」
「っへ!?」

耐えられなくて口を開けば、急に呟かれた言葉にデカい悲鳴と共に顔を歪めて相手を見上げてしまった。
ばちりと瞳があわさって、顔はあり得ないくらい真っ赤になってたと思う。

「それは…あ、明後日の誕生日に…ってことですか?」

わかっているのに、なんで俺は質問なんかしちゃうんだろうと自己嫌悪に陥りながらも、合ってしまって離せない瞳がその台詞に嬉しそうに歪んだのを見てどくんと脳に血がまわった。
妖艶に艶めかしくとその単語がまさに似合う背筋がぞくりとするような色めかしい笑顔でこちらを捕らえる。

「朝から、家に行くからね」

折角作ったケーキも無駄になりそうだ。
いいでしょ、と言いたげにこつこつと鎖骨を指でノックされて目が潤んできてしまってそれを見た貴方は、ちゅ、と音を立てて頬に唇を押しつけたりするから血液が逆流しそうになる。

「ひ…ひ、ばりさ……っ、」

治まらない脈と冷めない熱を押さえて声を引き出せば、雲雀さんは少し離れて今度は額にキスをしてから、あの笑顔のまま、
ゆっくりと耳元で囁いた。

「今日はこれくらいで許してあげる」








甘い香りが隣りを抜けて、
部屋には貴方の残り香だけが残った。


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HAPPYBIRTHDAY2

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