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騙され契約
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騙され契約/001



事務所に行ったら真っ先に朝ご飯作ってみぬきちゃんを学校に送り出したら、部屋の掃除をして、それから溜まった洗濯物を片付けて、(成歩堂さんがいたら昼ご飯を作ってから)仕事で使う書類の整理をして、みぬきちゃんが帰る前には買い物に行って夕飯の準備(ビビルバ―で仕事がある日は夜食も作って)、その後は片付けしてお風呂入って…


「主婦か」


一日の生活を振り返って、思わず洩れる溜息。
弁護士のはずが何故か家政婦やってる自分が嫌になる。
肝心の家主である成歩堂さんが、一切何もしないのは問題があるけど。


「少しは手伝って下さい、オレは家政婦じゃないんですよ」

「うん、いつもありがとね」

「欲しいのは感謝じゃなくて、成歩堂さんの誠意です」


オレが何を言っても、成歩堂さんはソファに寝転んだまま動こうとする素振りすら全く見せない。
ヘラリと笑った顔を新聞から覗かせて、…こっちが脱力してしまう。


「片付けは昔から苦手なんだ」

「掃除が嫌なら洗濯でも料理でもなんでも良いですから、」

「掃除も料理も得意じゃない」


完全に動く気0だよ、この人。
笑えば許されると思ってるのか。


「まったく、…オレが居なくなったらどうするんですか」


手伝いをして貰うことを諦めて、少しの間に散らかった事務所を片付けようと席を立つ。

それと同時に突然バサッガタッと大きな音が響き、情け無いことに驚きで身体が強張った。


「な、成歩堂さん…!?」


それは、今までずっとソファに寝ていた成歩堂さんが勢い良く立ち上がった音だったわけだけど、この人…何か凄く変な顔してる?

哀しそうな、痛そうな、そんな表情。






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