黒猫

□第5話
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数時間後、右手を包帯で覆ったシャチと首を鳴らしながら歩くローが戻ってきた。


「お帰りキャプテン!シャチ!」


「それじゃ暫くなんも出来ねェな…笑」


笑うペンギンにシャチはうるせェと口を尖らせそっぽを向いた。
ローは黒猫の近くまで寄るとペンギンとベポをクイクイと指で呼んだ。


「どうしたのキャプテン?」


「仕事ですか?」


「あァ。少し、な。
ベポ、コイツの頭押さえろ」


そう言うと、ローは先程から手に持っていたタオルを細長く丸め始めた。
何をするか何と無く予想がついたベポは、黒猫の後ろに回り頭を固定した。


『!!イヤだ!イヤだ!!』


一生懸命ベポの手を振り払おうと頭を振るが、ベポの力が強く全くほどけない。


「そのまましっかり押さえてろ」


細長く丸めたタオルの端を持つと、ローは黒猫の口に噛ませた。
そのまま後頭部でしっかりと結び、これで噛みつきは防止できた。


「ベポ、もういいぞ」


「アイアイキャプテン」


ベポがぱっと手を離すと同時に黒猫はブンブンと頭を振り、必死にタオルを取ろうとする。


『〜!!!』


「とれねェよ、諦めろ。
ペンギン、ベポ。コイツを俺の部屋まで運べ」


「アイアイキャプテン!」


「今度は何する気ですか…」


「さァなァ。」


二人に指示するとローはさっさと自分の部屋へ向かった。
ペンギンは呆れつつも、ベポと一緒に暴れる黒猫を抱え船長室に足を向けた。






























────────────────


































「そこのベッドの脚に縛り付けとけ」


船長室に着くとローは既にコーヒーを入れ寛(くつろ)いでおり、ペンギン達に視線を向けると顎で場所を指示した。
ローのベッドはキングサイズで、黒猫が暴れてもビクともしないくらい頑丈だ。
指示された通りベッドの脚に縛り付け終わると、ローに向き直る。


「キャプテンもういいの?」


「あァ。もう好きにしていい」


ローはコーヒーを啜りながら答えた。
ベポはアイアイと言って部屋を出ていこうとしたが、ペンギンは立ち止まりローに声をかけた。


「何しようとしてるか知らないですけど、怪我だけはしないでくださいね。あんたが怪我したら、誰も治せないんだから」


はぁと溜め息を付きながら言うペンギンに、余計なお世話だとでも言うように手で追い払う素振りをした。

ペンギンとベポが出ていったのを確認すると、ローは手に持っていたコーヒーを置き、黒猫へと近付く。
やはり異常に警戒する相手に、少し苦笑すると同じ目線になるようしゃがみ込む。


「(綺麗な目だな・・・)
んな睨むな。外してやる」


黒猫の吸い込まれそうな瞳を目を細くして眺めながら、スッと後頭部に手を伸ばし、キツく結んだタオルをほどいてやる。
その瞬間噛みついてこようとしたが、やろうとしてる事は大体予想でき、軽く避ける。


「っと。ホントに獣だな。一体どんな生活してたんだ?」


返事が返ってこないと解っていながらも声をかける。
タオルが擦れて出来た頬の赤い跡が目に付き、再び手を伸ばすがやはり牙を向く。


「(全く手が出せねェ…)」


ポリポリと頭をかきこれからどうするかと思考を巡らせる。
取り敢えず連れてきてから黒猫に何も食べさせていない事を思い出し、厨房に向かった。








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