旅の記憶

□ミルキーウェイ
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「あーもぅ腹減った!死ぬ!俺死ぬ〜」

「あーさっきから煩ぇ猿ッ」

助手席から身を乗り出しハリセンを構える三蔵の腕を、華奢な腕が優しく捕える。
「まぁいいじゃないですか三蔵。街にももうすぐ着く筈ですし」

運転席からふわっと笑いかけられ、三蔵は小さく舌打ちし座り直す。
ここ最近ずっとこの調子だ。どうも八戒の笑顔に弱い。
実際このお陰で、最近悟空を思い切りひっぱたけた記憶はない。

「…大体誰だ日没までには街に着けるなんて言った奴は」
マルボロに火を点ける。

「僕の予定は消費税抜きですからね(笑)」


砂漠のど真ん中。
予定だった日没はとっくに過ぎ、天の川が黒い空を繋いでいる。

通りすがりの妖怪に足止めさせられ、むせ返る暑さといくら走っても変わらない景色に三蔵の苛々はピークを通り越していた。

「カルシウム足りてねぇんじゃねぇの三蔵サマ。それとも欲求不満?コワーイvV」

先程の戦いで軽傷を負った悟浄は、悟空の横でシートにもたれ星を眺めていた。

「地獄への片道切符なら無料でくれてやる」
細く紫煙をくゆらせる。

「…そういえば今日は七夕ですねぇ」

ふと思い出したように、にこやかに八戒が言うと悟空が身を乗り出した。

「何それ」
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