Novel C

□fall to this arm...
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バッティングや守備の調子が悪いのはどうやったって周りのヤツらに隠しようがないが
そのせいで悩んだり体調まで悪くなってしまっているコトは誰にも気付かれたくなかった
上手くいかなくて悩んでるのは俺だけじゃねぇ
俺以上に悩んだり努力してるヤツはいくらでもいる
そんなヤツらの前で暗い顔したり弱音吐いたりなんかしたくなかったし
誰かに慰められたくもなかったから
みんなの前ではいつも通りにしていたのに…

この人には見抜かれてしまってたのか

『あんまり無理するなよ?』
『クリス先輩?』
『調子が戻らなくて辛いのはわかるがあんまりムリするなよ?焦ってムチャして体壊すヤツだっているんだ』
『ヒャハ!大丈夫っすよ!俺、そんなヤワじゃねぇんで』
『ソレもやめろ』
『は?』
『ムリして平気なフリなんてしなくていい』
『別にムリなんて…』
『お前は普段通りのつもりだろうが、最近のお前は、見てられないほど痛々しかったぞ?』
『…どうして?』

どうして、気づいたんすか?
どうして、こんなこと言うんすか?
どうして、そんな優しい瞳で俺を見るんすか?

『いつも元気なのはお前のいいトコだがな、たまには落ち込んだり弱音吐いたりするのも悪いコトじゃないぞ?』
『でも、そんなの…』

そんなの出来ねぇ
今さらアイツの前で弱音吐くなんて

『恥ずかしいか?弱ってる自分を見られるのが』
『…』

『じゃ、俺の前だけにしろ。それならいいだろう?』
『え?』
『俺といる時だけはムリせず弱音を吐けばいい』
『クリス先輩?』

それって…?
クリス先輩の言葉の意味がわからず
真意を測ろうとついその顔をマジマジと見つめてしまった

すると
突然、先輩が近づいてきて
かわそうと身を動かすより先に
暖かく逞しい腕に包まれた

『ぇ?ええ!?クリス先輩!?』

突然の事態になにがなんだかわからず
先輩の腕の中で騒ぎながらバタバタともがいた

だけど、クリス先輩の腕が動く気配はなくて

『マジ、離して下さいって!!』

必死で胸を押し返しながら言うと

『倉持…』

背筋がゾクリとする程の甘い声と共に腕に力を込められた
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