Novel C

□My irritation and loss
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気付かれないように距離を少しずつ縮めた
やっと信号待ちで追い付くと
小さな背中に向かって声をかけた

『おい』
『ん?』

振り向き様に「何だ?」と警戒心と敵対心剥き出しの
鋭い視線が向けられる

『お前、青道の野球部だろ?』
『だったらどーなんだ?』
『俺、わかんねぇか?』

俺の顔を暫く睨んだ後
思い出したように「ああ!」と声をあげた

『黒士舘の…えっと、確かクリス先輩の元チームメートだったっすよね?』
『そうだ、財前だ』

俺の正体を知ると途端に表情も声も和らいだ

『で、その財前さんがなんの用っすか?』
『別に、用ってほどのモンでもねぇけど』
『は?』
『お前、部活は?サボりか?』
『んなわけないっすよ!今日、オフなんで。
そっちこそなんでこんなトコいるんすか?』
『別に』
『なんだよソレ』

不機嫌そうに言うがその声には先ほどまでのトゲがない

『お前これからどーすんだ?』
『え?別に。ちょっとそのへんフラついて帰るだけっすけど?』
『じゃ、ちょっと付き合え』
『えぇ!?』
『ヒマなんだろ?』
『そうすけど』

「なんで俺が…」とブツブツ文句を言いながらも
歩き出した俺の後をついてきた

初めて話すヤツにこんなあっさり付いてくるなんて
めでてーヤローだ
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