Novel C

□始まりの挨拶
3ページ/6ページ



『倉持』
『はい!』

名前を呼ばれると
つい身構えてしまう

『そんなに俺が恐いか?』
『え?』
『さっきから脅えてないか?』
『そ、そんなことないっすよ?』
『そうか。それならいいんだが。今日はコレを渡したかったんだ』

哲さんは小さな紙袋を差し出した

『ぇ?』

条件反射で受け取ったソレはどこか見覚えのある紙袋で
中には箱が入っているようだ

『あの、中見てもいいっすか?』
『ああ』

紙袋の中身を取り出してみる

『…え?コレ』

入っていたのは手の平サイズの箱で
ピンクの花柄の包装紙に丁寧に包まれ
かわいいリボンまで付いている

開けてもいいんだろうか?
チラリと哲さんを見ると

コクリと頷き返された

リボンを解き
破らないようにと丁寧に包装紙をめくる

出てきた箱には
紙袋と同じく見覚えのあるロゴが記されてあった

コレ、確かカップル用の指輪とかネックレスとか売ってるブランドのだよな?
流行りのブランドらしくクラスの女子が彼氏からプレゼントされたと嬉しそうに話しているのを何度か見た

けど、今ソレが何で俺の手にあるんだ??

何だかよく分からないまま
箱を開ける

中には四角いプレート型のペンダントが入っていた

中央には天然石らしい、キラキラ輝く石がはめ込まれていて
その下には英字で3行程文字が刻まれている
取り出して裏を見ると
右端に寄せてブランドのロゴが半分だけ刻まれてある
そのデザインからして
おそらく、もう一つ対になるペンダントがあり
ふたつを合わせればロゴが完成するようになっているのだろう



コレを俺に?
哲さんから?
何で哲さんが?
てか、コレってどーゆうこと…

『俺からの気持ちだ。
片方は俺が持っている』

そう言ってシャツの衿口を指さした
そこには自分の手にあるのと同じ形のペンダントが

『!?』
『どうだ?受け取ってくれるか?』
『あの、気持ちって?』

自分は恋愛事には疎い方だという自覚はあるが
ペアのアクセサリーを渡す、ソレが何を意味するのか?
それくらいはさすがに分かる
それでも、訊かずにはいられなかった

『お前が好きなんだ。付き合ってほしい』
『そんな…』
『迷惑か?』

男が男にペアのアクセサリーを渡し愛の告白
なんて冗談みたいな話だが
俺を見る哲さんの顔はいつもと同じ真面目な顔で
目は真剣だった
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ