Novel C
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『すんません!遅くなって』
廊下でバタバタと足音がしたかと思うと
ノックもせずにドアが開き
倉持が慌てて入ってきた
『遅ぇぞ!てか、ノックぐらいせんか』
『すんません!…あれ?他は?』
倉持が俺しかいない部屋を見渡す
『知るか、どっか行ってんだろ?』
『へぇ。あ、また純さんがいじめたんじゃないっすか?』
倉持が悪戯っぽく言う
『そんなコトしねぇよ。お前がいじめられてぇのか』
プロレス技をかけるフリをしながら言う
『や、冗談っすよ!ジョーダン!それより、早くビデオ見ましょーよ!』
俺は用意していたビデオをデッキに差し込むと
再生ボタンを押した
試合が始まると倉持は食い入るように画面を見つめる
既に1度ビデオを見ている俺は横目でその真剣な横顔を見つめる
『…ここのピッチャーのフォークには要注意っすね。スピードはあんま速くないけど、かなり落差あるっすよね?』
『ああ』
試合をひと通り見終った後で倉持が感想を言う
『…やべ!もうこんな時間』
しばらく対戦相手について話していると倉持が急に声をあげた
『じゃ、ありがとうございました』
『帰んのか?』
『そっすけど?』