Novel C

□Barren love
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御幸は突然顔を上げ、潤んだ瞳で俺を睨む
その視線を真っ直ぐ受ける

『そんなんでホントに俺のモノに出来んならとっくにしてる。
純さんだってホントはそう思ってるんじゃないっすか?』
『…』
『出来るコトなら…許されるコトなら、今すぐにだってアイツに「好きだ」って言いたい。
キスして抱きしめて、俺だけのものにしたい。
ケド、そんなの絶対出来ない。そんなコトしたら一生、倉持に許してもらえない。
友達でさえいれなくなる。
…分かってますよ。ちゃんと。
アイツは俺じゃダメだって。
倉持が好きなのは、華奢で可愛い女の子だって。
頭じゃちゃんと分かってても、それでも気持ちは割り切れないんすよ。
…どうして、好きになる相手って選べねぇんだろ?タイプじゃなくても、両思いになれなくても、
せめて気持ちを告げることくらい許される相手だったらよかったのに』

『御幸…』

正気を失い独り言のように話し続ける御幸を宥めるように
机の上できつく握り締めている拳に自分の手を重ねた

『純さん…』

御幸は震える声で俺を呼ぶと
顎を少し上げゆっくり目を閉じた

俺は青ざめたその頬に手を添え
目を閉じながら顔を近づけると
そっと唇をあてた




閉じた瞼の裏で
倉持の姿が揺れている



end.


『Barren love』
2008.5.2.
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