B☆SSブック
□悩みは尽きない
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隣に座っていてわかった。
あ、私の方が座高高い。
前屈みに座わればちょっとは…
あ、なんか違う。これじゃあ猫背に見えるだけだ。
逆に後ろへ…
いや、これは角度的に鼻の穴まる見えかも。……ヤバイ!それ以前にこれ二重顎になってるよ!
なら、右へ、左へ、それとも斜めにするか…
「……おい」
「は、はいっ!?」
彼と私の身長差、凡そ15センチ弱。
日谷番隊長の隣に座れば私の方が高くて当たり前だけど、乙女心に少しばかりヒビが入った。
「…なんで、しょうか?」「さっきから落ち着きがねぇ」
ですよね。そうですよね。ごもっともですよ。そわそわそわそわ隣で動かれりゃ私でも気になるよ。
「どうかしたのか?」
「いやっ別にありませんよ!!」
やべ、声裏返っちゃった。正直者な自分は今いらないんだけど……
あははっといかにも苦笑いをしてごまかせないとわかっているのにごまかした。
「隠してねぇで正直に言えよ」
「…けして言えない訳じゃないですけど、私の乙女心の問題です」
乙女心?なんだそりゃ。と言いたげな表情をされたが、またあははと苦笑いで返した。
言えない訳じゃない。けど言ってもくだらないことだし、身長差ゆえに仕方がないことで、どうにかなる問題でもない。
特に何を話していた訳でもなかったさっきまでと今では、同じ会話がないでも今の方が静かな気がする。
どうしよう。座高なんて気にしなきゃよかった。
元々、乙女な心なんて私にはちょっとばかりしか備わってないのに、こんな時にそれを気にしてどうするんだ。
「……そろそろ行くぞ」
「…はい」
つられ立ち上がって、先に歩き出す隊長を追って斜め後ろについた。
あ、この距離からならあんまり身長差がなく見えるかも。
しかも一歩引いた位置から夫について行く的な?
夫を立てるいい妻なみたいな?
そんなこと考えたって私達は付き合ってもないけど。ただちょっといいかんじなんじゃないかと自分で思ってるだけで、そう思ったことですら恐れ多い程の人物だけど。
妄想だけなら別に減るもんじゃないし。モテるって嫌な気分じゃないだろうし?
妄想だけならいいよね…?
っておい!さっきまでの話しはどこへ行ったんだよ。
心の中で一人ツッコミをして変な考えを捨てさる。
それでもさっきまでとは違って、気分は少し上昇した。
前を歩く隊長は、ここからでは表情が読み取れないけど、歩くペースが私に合わせてゆっくりだからさっきの態度に怒ってる訳じゃなさそうだ。
このまま座高のことは忘れよう。(因みに妄想も)
やっぱり気にしても仕方ないことなんだから。
そう決めて、気分はもうスッキリだ。
背筋を伸ばして先を歩く彼を見ると、急に彼が立ち止まった。
「おい」
「はい?」
返事を返してもなかなか呼ばれた理由を言わない日谷番隊長。なにを躊躇っているんだろうか。
「どうか、しましたか?」「……厠」
「か、厠、ですか?」
立ち止まった場所は調度厠の前だった。
(なんだ、トイレに行きたかったんだ。)
「私に気にせずどうぞ、日谷番隊長」
「…いや、俺じゃなくて」「へ?」
俺じゃなくて?じゃあ誰が厠に用事?
「え、っと……」
「……俺はそこの店にいるからな」
「た、隊長?」
えーっと、えーっと。
……………もしかして勘違い、された?
………どうしよう!!
呼び止めて私はトイレに行きたかった訳じゃないんです座高を気にしてたんですって言うのか?
それも恥ずかしい。
だからってこのまま隠してトイレに行って、いやースッキリしましたって行くのも恥ずかしいだろう!
私、どうすればいいでしょうか………―――
悩みは尽きない
(どうしよー)
(腹でも壊したのか…?)
(あんまり遅いと腹壊したと思われそうだしー)
(暑いからってかき氷食ったのが駄目だったのか…)
(日谷番隊長どうか勘違いしてないでえぇ)
END.