海☆長編サブリエ(ブック)

□違和感
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薄っすらと意識が浮上する。
ずいぶん寝たはずなのに、なんだかとても疲れた体がダルかったがマナはゆっくりと起き上がった。


「………。」



ぼけーっとしながら、とりあえず周りを見てみると、誰もいなく自分ひとり。


嫌な夢を見た。

昔の、小さな頃の夢。

久しぶりに見た気がする。





「……あったかい」



ふと、左手が温かい事に気がついた。
いつもこの夢を見るとすぐに目が覚めるはずなのに…それもおかしい。

外が賑やかだから今は陽がのぼっているはずで、朝にはなっている。
嫌な夢を見たのに、朝まで寝れていたらしい。


ー大丈夫だー


誰かにそう言われた気がする。それがひどく落ち着いて…。

マナは考える。部屋はどちらかといえば寒くて、毛布から出ていた手は冷えているはずなのにどうして温かいのか。
もしかしたら誰かがそばにいてくれたのだろうか。






ガチャ




「起きてたのか」


絶対この人ではないな。そう考えながらマナはローにおはようございます。と挨拶を返す。

体温計を渡されればマナも抵抗なく体温を計り、終わればローに渡す。
ローはそれを紙に書き込んでいて、まるで入院生活を思い出す。

愛想がいいわけではない。
白衣を着ているわけでもない。
態度もでかいし、口も悪い。


「顔色が悪い。何日かは安静にしてろ」


「…はい」


「薬だ。食事を持ってこさせるから食べたら飲め」


「はい」


でも医者らしい。…いや、実際医者なのだけれど。
このローに本当について行くか…どうするのが自分にとって一番いいのか。



…そんなの、決まっている。
ローのそばにいた方がいいのはわかり切っている、ならなぜ?



ローを信用していいのか。ローが目当てで乗り込んだはいいが冷静に考えるとどうなのか。
急に、不安になった。

何が不安?


そうだ。口でだけなら何とでも言える。″あの人達″もそうだった。


迎えにくる。


そう言ってこなかったじゃないか。





ただ、ローは…違う。漠然とそう思ったのも確かだった。




ついローの事を見てしまうと、視線を感じたのだろうか。


「どうしても動きてぇなら甲板に少し出るくらい許可してやる、ただし、明日以降だ」


マナの視線が何日かは安静という言葉の不満だと思ったらしいローはそんなことを言い出した。

別に不満でもなかったけれど、確かに暇を潰すものがないのでそれはありがたく頷くことにする。


「ただ、誰かに絶対声をかけろ、…船ん中で迷子になられても迷惑だからな」


「…ありがとう、ございます」



迷惑。
その言葉はマナの心に沈んだ。

なるべく、迷惑をかけないように。
それだったら散歩になんかいかなければいい。

マナはもう一度布団をかぶり横になると、数分もしないうちにローは部屋をでて行った。





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