海☆長編サブリエ(ブック)
□気づかない優しさ
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「だって、一人って寂しいし、誰かの助け無しで生きていける人いないんじゃない?」
「だ、て。私…普通じゃ、ないし」
「普通じゃねぇからってなんなんだよ!」
「「…⁈」」
転がり込むように部屋に入ってきたのはシャチだった。
その後ろにはペンギンもいる。
通路でずっと話を聞いていたんだろう。マナ以外はそれに気づいていたはずだ。
「いいか!大事なのは″生きたいか″″生きたくないか″じゃねぇ!
この船で、俺たちと旅を″したい″か″したくねぇ″かだ!」
「…」
生きたいか、生きたくないか、じゃない。
「お前はどうしたいんだ?」
「………わ…たし、は」
「体の事関係なく考えろ」
「………私……」
「おい」
マナが答えられず、シャチから視線を外そうとした時、低い声が部屋に響いた。
開いたままのドアには、すごく不機嫌な顔をしたローの姿があった。
「せ、船長‼」
「シャチ、てめぇバラされてえのか…聞き耳たててたのはいいが、急かすような事は言うな」
ヒィっと叫び声を上げ、後ずさるシャチを視界のはしに捉えながらローはマナを見る。
「…まあ、コイツの言うこともふまえ、良く考えろ。さっきも言ったが今すぐ結論を出す必要はない」
「…は、はい」
「ペボ以外部屋から出ろ」
「もちろん、船長」
苦笑いしたペンギンがシャチを引きずりながら部屋をでて行けば、それを確認したローもため息をつきながら出て行く。
嵐が去ったかのようにシーンとなったペボがマナを見て笑った。
「マナ涙止まったね」
目元に手をやれば確かに涙は止まっていて、理由は驚いたからだろう。
「皆と、旅をしたいか、したくないか、か」
「キャプテンも言ってた。ゆっくり決めればいいって、ほら、冷めちゃうから食べよ!」
完全に止まっていた手に気づき、また少しだけスープを飲む。
ひとくち。ふたくち…。
すくったスプーンがカチャリ音をたててもとの位置に置かれ、マナは申し訳なさそうにペボを見た。
「ごめんなさい…あんまり食べれなくて」
「いいよ!ひとくちでも食べてくれれば」
「でも、美味しかったよ」
ならよかった。ホッとしたようにペボが笑えば何かを思い出したのか口を開く。
「マナ」
「なに?」
「今日はここで寝てね。キャプテンがたまに様子見にくると思う」
「…私、もう大丈夫」
「ダメだよ!二日のうちに二回も倒れてるんだよ!ちゃんとキャプテンの言う事聞かなきゃ!」
さっきまでの優しいペボはどこへ。
怒りながら一気にそう言われれば、マナはただコクコクと頷くことしか出来なかった。
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