海☆長編サブリエ(ブック)

□警戒の理由
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そこには、ついさっき敵に向かっていたはずのこの船最強の男。
涼しい顔をして、息ひとつ乱さずに刀を手に持ち中へ入ってきた。
外がどうなったかなんて愚問だ。

時間からしても大した敵ではなかったらしい。
後片付けはクルーに任せたに違いない。

不満そうな部下に、眉を寄せ答える。



「情報ならやったろ」

「″ペボが″ね」

「何だ、文句あんのか」


この船長に言い返すのは得策ではない。長年の経験からしてみて…話題を変えた方が良さそうだ。



「………それより船長、薬は調合しました。見ての通りだいぶ落ち着いてますよ」

「あぁ」


持っていた刀を薬棚にたてかけ、ペンギンの用意した点滴を受け取ると手際よくマナにつけていく。


「…いいのか…?ってアンタ何して」


次に何をするか、様子をみてみればこの男、なんの躊躇もなくマナの服を探り出した。

着ていた上着は治療の邪魔になるからとペンギンがぬがした。その中からロー探り当てた小さな紙をペンギンへと投げてよこす。


「これ…船長⁉」





ローの手配書。

マナが大事に持っていたのはローの手配書と薬瓶。


ローは分かっていたのだろうか。

ただ、この手配書の存在を知っていたのなら警戒して様子を見ていた理由にも納得がいく。
なら、何故自分達に言ってくれなかったのか。


「馬鹿がいたからな」

「あぁ、馬鹿ですか」


フンと鼻を鳴らし言うローにペンギンはすぐ理解した。
何日前だかマナ本人に″敵っぽくねぇ″発言をした馬鹿…別名シャチ。
あれをへらっと笑って言われた時はローの手が愛刀に伸びたのは言うまでもない。

ともあれ、これでは敵でもなければただの島の娘で、厄介な病を持っているという点が特殊ではあるが、ひとまず
警戒する相手ではないので安心だ。


「ある意味マナは船長を狙ってたって事か」


病を持つマナ。
″死の外科医″の異名を持つローに用事があるならその事だろう。



ふーん。ペンギンがおおよそ事態が飲み込めた時。この部屋へ向かっているだろう賑やかな足音が聞こえた。



「船長ぉ‼片付け終わりましたよ!」

「お宝大量だよキャプテン!もうすぐ島だし…マナ、どうしたの?」

「おぉ‼本当だ!コイツどう…⁉ってェ‼」


賑やかに入ってきたシャチとペボ。
マナに気付いたペボは声のトーンを落とすものの、シャチはお宝大量に興奮気味で煩い。
そんなシャチに鞘付きの刀を容赦無く振り落としたのはもちろん彼。


「うるせェ」

「すみません船長」


涙目になりながら痛んだ頭をさするシャチは…


「で、コイツ何で寝てんすか?」


立ち直りも早い。
点滴をみれば分かるだろうに。


「発作がおきたらしい」

「「発作?」」


二人は首を傾げるだけでそれ以上頭が回らないらしい。


「いい。マナが起きるまで話は終わりだ。ですよね、船長」

「あぁ」


えぇ‼全然わかんないんですけど‼
とシャチの顔に書いてあるが、さすがに口に出すほど馬鹿ではないらしい。


「お前ら予定通り島へ進ませろ」


「「了解」」


「ペボ、コイツ起きたら知らせに来い」

「アイアイ、キャプテン!」


軽く指示をし、ローは先に医務室を出た。






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