海☆長編サブリエ(ブック)
□警戒の理由
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ペンギンはローの言葉の次には船内へマナを抱き上げ走っていた。
渡されたという事は任せるということだ。
素早く目的の部屋へ行き、マナをベットに降ろす。
さて、何が必要か。
ぐるりと部屋を見渡そうとした時、グッと服を引っ張られる感覚。
「どうした?」
何か訴えたいらしいマナに一応声をかける。
言いたい事はペンギンには分かっていた。
「…い、いっ、…っ…いって」
「船長なら大丈夫だ。むしろあの人に迎え討たれる″あちらさん″が気の毒なくらいな」
私はいいから、というマナに苦笑いしながら答える。
船長の強さを分かっていない彼女に理解させるのは難しいところではある。
こんな状態でなければ説明してやってもいいのだけれど。
まずやる事を、小瓶を持ち上げ問う。
「で、コレはお前の薬であってるか」
こくり。暫定すれば何故かペンギンは薬瓶を机に置き今度こそ部屋を見渡せば、目当てのものはすぐに見つかる。
テキパキと、手にした紙を見ながら棚から何かを取り出し調合する。
そうして差し出された白い粉は、普段マナが飲む錠剤とは形が違うものの、薬だ。
飲める。…そう頷きたいが体が動かない。
「悪い、起こすぞ」
「…っう…」
ペンギンの片手で体を支えられ、片手には薬。
マナが口を開けば薬の次に水が少し流し込まれ、なんとか飲んだ。
呼吸の苦しさはなくならない。
当たり前だ、薬が効くまでには時間がかかる。
「は…はぁっ…はぁ」
呼吸の仕方を忘れたように短く息を吐き出すマナに、ペンギンは他に何かできないかと思考をめぐらせる。
「大丈夫だ。じきに楽になるはずだ」
「ごめ…っな、さ…」
点滴を用意しようとした手が止まり、そしてその手はまだ涙を流すマナの目元に行き着いた。
「今は休め、…いいんだ、気にするな」
寝れたら寝ろ、とでもいうように、ペンギンの手はマナの頭を優しく撫でてくれた。
子どもの頃、母親にこんなことをしてもらった記憶がある。
それももう曖昧でしかないが、とても安心できるものだった。
「持っていたヤツより少し強い薬だから、眠気もくるだろ?」
「………は、い」
頭を撫でられ十分もたてば呼吸がだんだん楽になると同時に強い眠気もくる。
そういえば、トロンとした口調でマナが問う。
「ペンギン、さん…も…いしゃ…です、か…?」
限界だったのだろうか。
ペンギンが答える前に、ことんと眠りについたマナからは小さいながらも寝息が聞こえる。
そして今のマナの言葉を頭の中で繋げた。
ーペンギンさんも医者ですか?
「……ん?おれ ″も″…って」
誰と一緒にされているのか…分からないペンギンではない。
何だ。そうか。
ギィ、医務室のドアが開く音がした。目を向けなくてもペンギンには誰が入ってきたのかわかる。
「…知っていたんですね、船長」
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