海☆長編サブリエ(ブック)

□邪魔された答え
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霧があった方角にうっすらと船が確認できた。


「…邪魔しやがって」


不機嫌に放った言葉には話を邪魔された事だけを理由に。
驚きも焦りもカケラもない。


「面倒くせぇ」



立て続けに大砲を撃たれ、波で船が大きく揺れるのもかまわず、ローが平然としているものだからマナは必死に柵にしがみつきながらその顔を凝視してしまった。



船が霧を越えてハッキリ視界に捉える事ができる。

先ほど誰かが叫んだ通り、ドクロを掲げた海賊船。




「…はっ…」


途端にマナの呼吸が短くなった。


「おい、お前はさっさと中に……?」

「…はっ…はっ」


ぎゅうっと痛いほど胸を掴んでみても、息苦しさが増すだけで治まってはくれない。

時期にここが戦場になることを予想し、邪魔だから中へ入れと。そう言うはずだったローの言葉が止まった。

マナの顔色は悪く、浅く呼吸を繰り返し、胸を手で掴んで放さない。かろうじて左手は柵に掴まり、膝で立っているのがやっとの状態。


「おい」

「ぁ…はぁ、…っ」

「……チッ」


呼びかけに反応はするも、動ける状態じゃないのは分かる。


「…っ…くす、…り」


伸ばされた手はローが持っている小瓶に向けられていて、気付いたローはそれを自分の背後に投げやった。


「‼」


…目の前の小瓶…薬が投げられてしまい、マナの伸ばした手の行き場がなくなった。








そうか…



助けない。



そう言われた気がした。
しょせん、勝手に船に潜り込んだ女。
病持ちで面倒臭い…どこにいても、お荷物な存在。

苦しい。

なんだか、心が痛い…



「ペンギン!」

「うわ、船長!なんだコレ⁉…って!マナどうしたんだ!」


ローの後ろでクルーに指示を出していたのはペンギンで、小瓶は難なく彼がキャッチし、苦しそうなマナを訳がわからず見る。

敵船は休まずハッキリとその姿が確認できるほど迫っていて、辛くて乱暴だと分かりながらもローはマナの腕を引いて無理やり立ち上がらせる。


「…っ、ごめ…なさ…」

「うるせぇ」


悲しさからか、苦しさからか、マナの目には涙が浮かび、その顔に眉を寄せるもペンギンへと投げつけるよう渡した。



「連れていけ」

「船長は⁉」

「アレを片付ける」


迎え討つ準備で慌ただしかった船に聞こえる程度の声を出したのか、はたまた誰もが船長の声に敏感なのか。

騒がしかった甲板は一瞬静まり…



「「 逃げろ‼ 」」


と何故かクルーが船内へと入り、残った数人は…かなりローから離れる。

一緒に戦いたいのは山々だが、ローが片付ける気になっているのなら必ず自身の能力を使う。
巻き添えなどくらいたくない彼等は後方で待機する他ない。


「おれの船を狙うとはいい度胸だ」


敵船を目の前に、ローは不敵に笑って手を構える。


「…ROOM…」





警戒の理由
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