海☆長編サブリエ(ブック)

□邪魔された答え
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あれから三日たった。
ペボとはよく喋り、ペンギンやシャチも暇があればマナの元を訪ねたり、付き添ったりする毎日。
それが実は監視という目的なことをまだマナは気づいていない。

もう三人にとってマナは普通の人以外に当てはまる言葉が見つからない。
ただ、船長のローだけは依然何か考えがあるようだった。

本人は気長に様子見をしよいとしていて、けれどそれがそもそもの間違いだった。気が短い彼に似合うはずもなく、日に日にある意味ストレスがたまっていく船長の機嫌をとるのは容易ではない。
それでも一応我慢して様子見をする、その理由を聞いていないものだから三人も一応注意して接することにしていた。









「そういえばキャプテンが甲板に出ていいって!今雪が降ってるよ!」

「雪が?」

「うん!行かない?」

「…行こうかな」


マナはこの三日でだいぶ疲れていた。
なれない船にゆられ、船内を歩く許可をもらっても、少しの掃除と洗濯以外は行く場所もなく、今日はほとんど部屋から出なかった。


「ほら!雪!」

「っ、冷たい」


初めて触る雪の冷たさに驚いているマナを見て、その場にいたクルーが笑う。

何人かは警戒もしていないようだった。警戒しても仕方ない人物として捉えていたらしい。

少し雪を堪能した後、マナは柵に捕まり海を見る。
向かって右側に霧がかって視界が悪く、正面には、向かっているだろう島らしきものが小さく見えた。
霧や嵐や晴天と見るからに天候の違う場所があるのはグランドラインの特徴、それくらいは知っている。
四季があるのも知っていた。
体感するのは初めてだが。




…次に考えたの不安だった。


「…島についたら…どうしよう」


ポケットから小瓶を取り出し眺めるも、それが不意に手から放れた。


「あっ!」


何かに弾かれ小瓶が上へと飛び上がり、弧を描いてそれは人の手の中に収まった。


「なんだ、これは」


ローだった。
彼の手には長刀。鞘に収まったその刀で弾かれたんだとマナには理解できなかったのか、驚きに固まる。
それほどローの動きに目がついていかない。


「いい加減飽きてきた。目的は何だ」


言われても仕方ないのは分かっていた。
だってこれは自分勝手だ。
マナはギュッと柵を握る。
自分が何者か、疑うのは当たり前だし、言ったところで受け入れてもらえない可能性の方が高い。



「俺を知ってるんだろ」

「っ⁉」


弾かれたようにローを見たマナの瞳は大きく、戸惑いの色が見える。


「バレてないとでも思ってたのか…コレと…しまってある紙だ」


ドクン、心臓が波打った。
胸を右手でギュッと掴む。


「俺の船だと分かって乗ったからには、俺に用事があるんだろ」


寒い。
笑う口が、今更感じる威圧感が。
冷めた目が。怖くて、体の芯から冷えて行く感覚に襲われた。


「……違うのか」

「…すみません」

「…」

「…すみません、でした」


黙りの後は謝罪か。
ローは呆れたように息を吐く。


「勘違いしてんじゃねぇ、俺は理由を言えと言ったはずだ」


それ以外に聞きたい言葉はないと睨みつける。

どうして震える?
どうなってもいいと覚悟して島をでてこの船に潜り込んだのに。
今更怖いだなんて笑える話だ。

言わなければ。

「…あ、の…」

身勝手でも望んだあの言葉を言わなければ。


「私は………‼」


ドドーンッ‼‼


突然、地響きのような音と、波が強く揺れて船にぶつかる音。
その場にいた双眼鏡を覗いた誰かが叫んだ。


「船長‼敵船だ‼」




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