海☆長編サブリエ(ブック)
□小瓶と紙
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「ペボ!」
イライラした声でローが呼べばペボはすぐに走ってきた。
「アイアイ!キャプテン!…あれ!マナどうしたの⁉」
「タオル持ってこい」
「わかった!待っててマナ」
走って行くペボをマナはぼーっと見送り、ローはまた口を開いた。
「行きたい場所でもあるのか?」
「…いえ」
「グランドラインを旅した事は」
「ありません」
「武器の扱いは」
「小型の銃だけなら…昨日の島でもたされていました」
「銃を持っているのか」
「いえ、必要ないのでおいて来ました」
必要ない?
海賊船に侵入するのに銃は必要ないのか?
行きたい場所もねぇ、航海経験もねぇ。
本気でマナの意図が見えず、ローが険しい表情になったところで、背後から走って来たのはシャチだった。
「水かぶったって?お前ドジだなーまったく」
「わっ」
ばさっとバスタオルを投げつけられ、なんとか受け取りお礼を言う。
幸い春島付近のおかげで寒いことはなかったが、放っておけば風邪をひいてしまいそうだから、正直ありがたかった。
「すみません、ペボの奴ペンギンに呼ばれて」
「ああ、別にいい。
シャチ、手伝わなくていいがついていろ。終わったら連れて来い」
「はい船長」
「マナ、さっさと終わらせろ
」
「…はい」
不機嫌そうに言い放ちさっさと中へ向かうローに、マナは少し髪の毛をふいて洗濯を再開した。
「なーんか、敵っぽくないよなー」
「て、き?」
手伝うなと言われていて、する事もなく相当暇だったのかシャチが海を眺めながら呟いた一言にマナが反応した。
「私が…敵、ですか?」
「ん?あ、…ああ⁉聞こえたか⁉」
「はい、…まあ」
やべぇ。と唸るシャチだがもう遅く、マナは余所者ではなく、敵だと思われていた事に少しだけ驚いていた。
ああ、そうか。
海賊だし普通…そうなるのか。
「私は、…海賊ではありません」
そうだろうな。とは思ったがシャチは口をはさまなかった。
「あの島にいたくなくて…」
「なんで?」
「…あの島にいたら、私の人生は決まっていたので」
人生?
シャチには意味がわからなかったが、マナは少し会話を続けた。
「自分の先をあそこで決めたくはなくて」
違う島に行きたかったわけじゃなかった。
あの島から出たくって。
そうしたら偶然…。
「…まあ、どうなっても、あとは運だと思っているので」
マナの話を後で報告できるよう記憶しながら、シャチはうん、ふーん、と相槌で答えた。
そんな話が途切れたところでマナに呼びかける。
「よし、行くぞ」
それにマナはキョトンとどこへ?とかえせば。
シャチは平喘と答える。
「船長んとこ」
「え?でもまだ」
「あと一回干すだけだろ、やっといてやるから…とりあえず行くぞ」
有無を言わさず歩き始めるシャチの後をただマナはついて行った。
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