海☆長編サブリエ(ブック)
□小瓶と紙
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ー操舵室ー
「キャプテン、様子見て来たよ」
部屋に入ってきたのはペボ。中にはすでにロー、ペンギン、シャチの三人がいた。
「悪い子には見えなかったよ?」
確かに、先ほどペンギンやシャチもローに報告していた。
三人の仕事はマナの監視だ。
ペンギンからは
「敵にしては船内歩いた時に観察してないんですよね」
シャチからは
「あいつ、掃除洗濯とか言ってたクセに洗濯の仕方わかんないらしくて…変わった奴だけど、敵っぽくはないですね」
ローは深くため息をついて三人をそれぞれ見渡す。
確かに、なんの能力もなさそうで、見るからに普通の女で…ならこの船に乗り込んだ理由はなんだ?
他になんかないのか。そう問われても三人が気になることは今のところ特にない。
ガタっと椅子から立ち上がったのはローで
「それぞれ持ち場に戻れ」
そう言い残し、部屋を出て行った。
カツン カツン
船内を歩けば無機質な鉄の音。
甲板に続く扉を開けば、青い空と海が広がっていた。
ローが甲板に現れたことで、多少の威圧感からか船員はローを気にする。
そんな中、ただ一人隅の方で体を丸くして洗濯だけに集中していて、明らかに違和感あるマナを見つけた。
残りの洗濯物と、横に干してある洗濯物を見れば、半々だろうか。
それでも午前中にそれは絶対終わらないだろう量が残っている。
一歩一歩近づくにつれてやはり疑問があった。
気配というものを読めないのか?
いや、ただの芝居というのもありえなくはない。
何者が来ても負ける気はしないが、用心するにこしたこともない。
ローが、「おい」と声をかければ、一回目で反応はなく、ため息をつきつつもう一度声をかければ、今度は目に見えて体を揺らし驚いた表情でマナは振り返った。
「……」
「…それは、どうした?」
マナはそれを理解して少しだけ笑う。
「さっきバケツひっくり返しちゃって…あ、ちゃんとここら辺は掃除しておきましたから」
確かに、この辺りはキレイにふかれていた。
かと言って、バケツをひっくり返して頭から水をかぶる馬鹿はいないだろう。
ローは視線を横に向けた。
「自分の仕事一つもまともにできない奴は船にはいらねぇ…」
「すみません!気をつけます…絶対気をつけますから!」
必死に訴えてくる姿にやはり疑問が浮かぶ。
今の言葉は自分に向けられて言われたと思っているらしいマナ。
殺気を出しているのにも関わらずマナはそれに対して反応せず、何故か少し離れて甲板の掃除をしていた奴がビクリと体を震わせた。
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