海☆長編サブリエ(ブック)
□それぞれの役目
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さっきの言葉はやはり彼が言う冗談だったのかその性格を知らないマナには分からない。
しかし、この船の船員に歓迎されていないことは分かっている。
素性も知らない怪しい女に自分は違いないのだから。
ズキン
余計な事は考えない方がいい。
黙り込んだマナを心配しているのかベポが口を開きかけたその時。
「よし、忘れないうちに残りをやっちゃおう」
「う、うん!そうだね!僕も少し仕事してくるから、また後でくるね」
「うん、ありがとうベポ」
気合いを入れて腕まくりし直したマナを確認して、ベポもまた船内へ入っていく。
相変わらずのいい天気と暖かい気温の中、先ほどの手順を忘れないようにと手を動かし、一枚一枚丁寧に洗っていった。
ふと、マナはポケットから小瓶を取り、白いものを一つとって口へ放り込む。
「うん、これでしばらく大丈夫」
そう笑い、再び手を動かした。
洗濯しては脱水をし、終われば干すという単純作業だったが、マナにとってはそれなりに重労働だったのかもしれない。
30分もすれば、疲れからかウトウトと瞼が重くなってくるのを感じた。
辺りをキョロキョロ見渡し、誰もいないことを確認すれば
「…少しだけ、いいかな」
ほんの少しだけ、そう自分に言い聞かせマナは洗濯機に寄り掛かって目を閉じた。
近づく影にも気付くことはない。
→小瓶と紙