海☆長編サブリエ(ブック)
□それぞれの役目
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大きな…
「っ!し、白熊⁉」
「白熊で、すみません」
喋ってる‼とにかく驚いたマナは胸のあたりをギュッと手でにぎる。
驚きすぎて心臓がバクバクいっていて、声にも出せなかった。
なんだかズーンという効果音が聞こえてきそうなほど落ち込んでいるネガティブな白熊に、マナは慌てて、すみませんと謝ると、白熊はパッと顔を上げた。
「僕はベポ、君がマナだよね?仲良くしてくれる?」
「は、はい。ベポ、さん」
「ベポでいいよ!敬語もいらないよ!それより、手どうかしたの?」
未だ胸を抑えている手に気付き、マナは慌ててそれを離した。
「えっと…すみ…じゃなかった、ごめんね、ちょっとビックリしちゃっただけ」
敬語もいらない、と言われたので言葉に甘えて普通の言葉に直し笑ったマナにホッとしたのかペボもニコニコ笑った。
「それ、洗濯なの?」
「うん、そうだけど…?」
何故か疑問系に聞かれ、何かいけないの?と首を傾げるマナにベポは驚いて言った。
「…洗剤どれだけ入れたの?」
「洗剤?…これを半分くらいかな?」
「半分⁉」
ペボの驚きようにマナは自分のした事を不安に思う。
ペボと、泡が溢れ出している洗濯機を交互に見てみる。
「泡立てちゃ…ダメだった?」
不安そうにベポを見上げれば、
「ちょっとやりすぎ、かな」
と優しく返す。
が、その後ろからまた違う声がした。
「ちょっとじゃねぇだろコレ!」
ありえない!と笑いながら来たのはシャチだった。
「俺はシャチ、よろしくな」
「は、はい、よろしく…」
「で、マナは洗濯したことねぇのか?」
ぎくり。マナはどういう顔をしたらいいのか分からなかった。
「だって普通じゃないだろ」
洗濯くらい誰でもできる。
ズキン
笑いながらいうシャチにマナは顔を歪めた。
普通。
自分が普通じゃないことは、自分が一番よく知っている。
「お、おい、冗談だって!軽く流せよ?」
どうやらシャチにしてみれば面白い光景だったらしく、大袈裟に言ってみただけらしい。
「シャチ、マナ虐めるなら向こう行ってよ」
「ばっ、虐めてねぇよ。冗談言って和ませようとしただけだろ」
「ふーん、ならいいけど」
本当に冗談なんだろうか?
しょうがねぇな、と一言呟いたシャチはマナの隣に座り、洗濯機の水を泡ごといったん捨て、新しく水を入れて説明しはじめた。
「水はこれくらい、洗剤はこれ一杯」
で、こうやって、洗って、ほら。
シャチは驚くほど手際良く洗濯機を回し始めた。
「わかったか」
「ありがとう、ございます」
驚きつつお礼を言えば、シャチは少し照れたように笑い船内へ入っていき、それを見たベポも笑っていた。