海☆長編サブリエ(ブック)

□それぞれの役目
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ガチャ

何の前触れもなくドアが開いたのは、部屋に監禁されてから初めて迎えた船での朝だった。
お腹が空いたなと思えば水とパンを一つ目の前にだされ、10分後にまたくる、と彼は一度部屋をでた。



10分くらいたった頃、ついて来いと言われ、マナは素直にその後を追う。
パンを持ってきてくれ、今迎えにきたのも昨日のマナを庇ってくれた人物だった。

「何でもすると言ったな」

「はい」

「船長から許可がおりた。当面お前の仕事は洗濯と掃除だ」

「………は、い」

昨日言ったからだろうか、その仕事内容にマナはあまりに自信なさげに答える。
連れていかれたのは甲板だ。

甲板に出る扉から
洗濯物が山積みになっていた。


「これで洗って、こっちに干す。水はここからな、無駄遣いするなよ?
午前中には終わらせておけ…あー、名前は…」

「マナ、です」

「マナ、俺はペンギン。よろしくな」

「…はい、よろしくお願いします。あと、昨日は庇って頂いて、ありがとうございました」

「ああ、俺は基本的に女子供には手は上げない主義なんだ。気にするな」


そう言って少しだけ笑い、しっかりやれよ、と手を振ってペンギンは中へ戻って行った。

外を見渡すと青い空に静かな風、穏やかな波。
マナにとって初めて見るものばかり。

「よーし、洗濯物やらなきゃ」

洗濯機に洗剤を確認して…マナは首を傾げた。


「…とにかく、やらなきゃ」


確か、昔母親がしていたっけ?
水に洗剤を入れて、洗えばいいはず。
なにもかも″初めての″マナは記憶を手繰り寄せ、なんとかゆっくりと仕事を始める。



朝から甲板にいるのはマナだけじゃない。
もちろん見張り台にはクルーがいるし、甲板の掃除をしている人もいる。

それぞれの役目を果たしている彼等からの視線は棘のようだ。
もちろんマナはそれにきづいている。
その視線は慣れているものだった。
慣れているからといって、決していいものではない。

ため息をつき、手を休めずに動かしていると、背後から大きなものが近づいてきていた。

「ねえ」

「え………ッ⁉」

いきなり呼びかけられ、振り向けば予想にもしなかった大きな…
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