海☆長編サブリエ(ブック)

□気づかない優しさ
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「タダとは言わない。そうだな…報酬はお前の治療、でどうだ」


「ち、りょう?」


ああ、とローは笑う。
ニヤリとした、とても優しいとは言えない笑いだが。


「悪い話じゃねぇはずだ」


「……」







「…何か軽く食事を用意させる。次の島までに決めておけばいい。あと…」


「?」


「お前のおかげでウチのクルーは助かった。相手多くてあいつ等でもさすがに全部の攻撃は避けきれなかっただろうからな。…礼を言う」


「ーっ!」









俯いたままのマナを残し、ローは足早に部屋を出る。




初めて礼を言われた。
それほど船長としてクルーを大事に思っているのかがわかる。

ただ、はい。わかりました。お願いします。とすぐに口からは出てこなかった。

数時間前、もう未来は望めないと思っていたはずだ。
見放されたはずだった。

足元に銃が落ちた時…どうなってもいいと思ったから撃った。


それが理由でまた拾われるなんて…











トントン。


控えめな音が聞こえ、小さく返事をすれば、顔を出したのはペボだった。
食事を用意させる。そう言った彼を思い出せば、来たのがペボで安堵の表情を浮かべた。


「寝てなくて大丈夫?」


「うん」


「よかった。何か食べれる?」



スープにお粥、カットフルーツが並べられたトレーをベット脇のテーブルに置いてたずねる。

まともに食べていないと思いながらも、やはり食欲はあまりわかずマナは開きかけた口を閉じた。


「ちょっとでも…食べられない?」


「…ごめん」


「…そっか」


「………」


「…うん、無理なら、しょうがないよね」


「……」


「……」




「あ………やっぱり、スープ…食べようかな」




なんだか、あまりにペボが落ち込み始めたのでそう言ってみると。


「野菜たっぷりだよ!」


ペボはわかりやすくニコニコと笑って見せ笑った。






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