海☆長編サブリエ(ブック)
□無くした光、見つけたモノ
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「あ!キャプテン!」
甲板から下を見下ろすローの顔が険しくなる。
騒ぎの原因は海軍ではない。
相手は同業者のようだ。
買い出しの間に遭遇したに違いない。面倒な事だ。
「何だお前ら、騒がしい。さっさと片付けろ」
「アイアイ!キャプテン!」
元気に返事をしたのはペボで、数が多い敵を体術で蹴散らして行く。
見ていて相手は強くない。
はっきり言って人数ばかりの集団だろう。
「いたぞ!トラファルガー・ローだ!」
誰かが叫んだ。
見つければ倒せるとでも思っているのか、敵の士気が上がった。
そんな様子をフンと鼻で笑い、マナを探す。
乾いた陸の少し先には森があり、マナは木の影に隠れていた。
割と近くにペボがいることから、隠れているようペボに言われたのだろう。
「ペンギン!」
「わかってる!」
小型の銃を持った一人がペンギンに近づけば、叫んだペボに返事をし、ペンギンが銃をピンポイントで蹴り上げた。
高く舞い上がった銃が向かった先は。
「…やべ」
マナの足元だった。
「おいペンギン!どこに飛ばしてんだ!」
「煩い…大丈夫だ、あいつが拾わなきゃ問題はない」
「…何やってんだ彼奴らは」
声が聞こえたわけではないが、上から見ていればだいたい想像がつく。
呆れたように声を出せば、視界の端っこでそれが動いた。
パアァァァーンッ
見間違い、だろうか。
いや、そんなはずはない。
ー武器は使えるかー
ー銃なら少しだけー
「…あれは少し、じゃねぇだろ」
顔には出ないが自分でも珍しいくらい驚いているのがわかる。
マナは足元に落ちてきた銃を拾い、それを一回転させて仕組みを理解したのか的を絞って撃ったのだ。
ローの口端が上がる。
マナの直線上、ペボを通り越してペンギンとシャチのそばで敵が数人倒れて行く。
上から見ているからこそ、それがわかるが、下にいる彼らにはわからないだろう。
「へぇ…″理由″ができたな」
柵に足をかけ、躊躇もなく船から飛び降りれば、気付いた船員達はローの後ろか船へと退避する。
「船長!」
「ペンギン、ログは」
「あと一時間もかからないかと」
「なら、シャチお前らも出港準備だ」
「「はい!」」
それと、近くにいたペボに視線を向ける。
「ペボ、あいつを連れて中へ入れ」
「あいつ?」
コテンと首を傾げ理解できないペボに言い直す。
「マナだ」
「キャプテン?」
いいの?どうゆう心境の変化かはわからないが、ペボは目を輝かせた。
「さっさと行け!」
「アイアイ!キャプテン!」
勢い良く返事をすると、マナを見つけて走っていった。
数だけの集団にローが負けるはずもなく、遊んでやったあとにちょうど出港準備ができハートの海賊団はバラバラな敵を残し、島を去ったのだった。
→無自覚