三部作番外編

□マルボロ
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パタパタと誰かが廊下を駆ける音がしてぱたりとそれが止んだかと思うとドアが勢いよく開く。
「セツ君!」
その部屋に飛込んで来たのは純白の猫耳と尻尾を持った少女。
「まだ居たのかよ家出娘。いい加減魔界に帰れよ」
部屋の主が手に持っていた煙草を持て遊びながら冷たく言う。
「セツ君そんな冷たい事言わないでよ」
少女―歌恋が不満そうな口調で言う。
歌恋が殺那に対して色々と言うが殺那はそれに耳を貸す様子は無く手に持っていた煙草を吹かす。
「ねぇ、セツ君コレ何?」
殺那に全く相手にされなかった為諦めて部屋の中を散策していた歌恋が紅い箱を手に取って聞く。
「マルボロ」
歌恋の問いに短く答える。
歌恋の方は答えて貰えると思って無かったらしく少し驚いた顔をする。
「まるぼろ?」
その言葉の意味が分からず無意識にそう呟く。
「煙草の銘柄だ。歌恋も吸ってみるか?」
歌恋の手から煙草を奪いさって箱から一本取りだし彼女に差し出す。
歌恋は戸惑いつつもそれを受け取る。
「コレどうするの?」
殺那から受け取ったマルボロを見ながら聞く。
「こうするんだよ」
そう言って手に持っていた煙草を吹かす。
「こう?」
戸惑いどいつつも見よう見まねで煙草を加える。
殺那が指でそれに触れると紅く火がともる。
歌恋が恐々と煙草を吹かす。
「…セツ君こんなのが美味しいの?」
そう怪訝そうに言って煙草を殺那に差し出す。
短くなった吸いかけを灰皿に押し付け歌恋の吸いかけを吸い始める。
「オレは好きだ」
殺那がふてきに笑って言う。
「こんなののどこがいいわけ?」
歌恋がやはり怪訝そうな声音で言う。

「ねぇ、時雨、そんなもの持って何処行くの?」
「何処って刹那の部屋に決まってるでしょ」
廊下から時雨と虚玖の声がして時雨のものらしい足音が刹那の部屋へと近づいてくる。
「刹那!美味しいワイン見つけたから一緒に飲も!」
程なくして部屋へと来た時雨が開口一番そう言った。
「まだそんなものやってるの?」
煙草を吹かす刹那を見ながら紅い箱を手に取り冷ややかに言う。
「別にいいだろ」
「ダメとは言ってないでしょ?ただどうしてそんな物やるのか理解できないだけ」
少し呆れたような口調で時雨が言う。
「かせよ」
「え?」
突然の刹那の言葉に時雨はキョトンとした。
「ワイン、飲むんだろ?コルク開けてやるよ」
そう刹那が言うと時雨は手に持っていた細身の淡い緑色のビンを刹那に渡す。
刹那が軽くコルクに触れるとポンっという音がしてコルクが抜ける。
「歌恋も飲む?」
時雨は聞いて歌恋が頷いた。

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